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「あかりんはね、借金なんてないんだ。今回の事に関してはね。でも、自ら借りたお金は返さなきゃ…って健気な子のお芝居をしてくれてるんじゃないかな。深刻な顔してね。あの子、あれで結構周囲に一目置かれてるからね。一本気があるって言うか融通が効かないっていうか。若い子は、そんな事あかりんに言われたら、どんな仕事でも頑張ってやらなきゃ…って思ってると思うな。」
「随分、須田さんの演技力に信頼を置いてるんだな?」
「まあ…ね。」
「君の演技力は大したものだ。そして、その野心も本物だろう。しかし…」
半沢が小さく笑い声を立てた。徐々にその笑いが大きくなってくる。
「何?何がおかしいの?」
「人を見抜く力量はまだまだ甘いようだ。それじゃ、人を動かすフィクサーには到底なれないな。まだ、アイドルとしての才能の方が恵まれているんじゃないかな。指原さん、シナリオを実際に動かすには人を見抜く力が必要なんだよ。確かに君には才能がある。しかし…才能は時をかけて磨かなくては光らないんだ。」

意味がわからない。指原は肩をすくめて表情でそう言った。
渡辺の方に目配せをする。

「見えてたかな?」
半沢が手元の机の上にホルダーに立てかけて置いていたiPadに視線を落とした。
怪訝な顔をした指原と渡辺にそのiPadの画面を向ける。
「は~い。Facetimeってスゴイんですね~。よ~く見えてましたよ。」
「あ…あかりん?なんで?」
指原が画面に向かって言った。
「あ~指原さん、ごめんなさい。玲奈さんに全部話しちゃいました。あと、そこにいる半沢さんにも。もうお芝居しなくていいんですよね?どうですか、亜香里のお芝居。楽しいですね、悪役のお芝居って。なんか、亜香里、地でやれてたような気がします。これって、腹黒って事なんですかね?うふふふふっ。」
「さ…指原さん…?」

先ほど半沢が見せていたような笑い声を今度は指原が立て始めた。
「あはははははっ。あーやられたわ~。半沢さんの言う通り、詰めが甘いんだな、ワタシって。」
「気がつくべきだったな。古畑さんが須田さんを引っ張りこめなかったのは、君の言うお土産が足りない訳ではなかったんだ。彼女は彼女の信じる道以外には進まないって事さ。指原さん、君は須田亜香里という人物を、自らの欲望に素直で貪欲だと値踏みした。そして、利さえあれば動く…そんな人物と評価したんだ。しかし、それは大きな間違いだった。須田亜香里は、誰よりもSKE愛が強い人物だったのさ。」
「そんなキャラじゃないと思ってたな。あかりん、そうだったんだ?」
「はい。奈和にも言いましたよ。亜香里、SKEが大好きって。それに…亜香里、今どこのチームにいるか知ってますか、指原さん?」
「KIIでしょ?」
「そうですよ。あの、あつっくるしいリーダーの下にもうかれこれ、1年半いるんですよ。そりゃ、みんなの事、大好きになっちゃいますよ。」
「ちゅり…か。そっか…あの子がいたんだったっけ。」

「指原さん、須田さんの説得に動いてもらって、SKEのメンバーは皆、事のからくりを理解している。君の狙ったように簡単に大人達の言う事を聞くという状態にはない。それに…なるべく取りたくない手段ではあるが、借金から逃れる手段は皆無ではない。俺が元々銀行員だって事を忘れないで欲しい。」
「全員自己破産でもさせる気?」
「いや…君達の言葉じゃないが…借りた金は返すのが筋だろう。」
「そんな方法あるの?」

「これは大人のケンカだ。指原さん、大人っていうのは、簡単にケンカなんかしちゃいけない。しかし、一度ケンカするって決めたら絶対に勝たなきゃいけないんだ。だから…絶対に勝つ。」
「でも…一つは、あなた達自身。ヤバいんでしょ?東京セントラル。ワタシが言う事じゃないけど、簡単には尻尾出さないって聞いてるけど。それから、あの子達の借金。簡単に返せる額じゃないでしょ?」
「わかってるさ。しかし、俺は絶対ケンカには負けたくないんだ。売られたケンカなら尚更な。やられたらやり返す。倍返しだ。それが俺の流儀なんだよ。」

「みるきー…ワタシ行くわ。リハしとかなきゃ。久しぶりの公演だしさ。半沢さん、ちゃんと見て行ってもらえますよね?」
「ああ。今日は君に全力でケチャを送ろう。」
「ぷっ…半沢さん、さっき言った事ホント?」
「さっきとは?」
「アイドルの才能があるって。」
「もちろん。俺は君が総選挙で1位になったのは決して色モノとしてなんかじゃないと信じている。メディアの中やステージでの君は、間違いなくトップアイドルの輝きを放っている。俺は、人を見る目には自信があるんだ。それが、銀行員にとっての全てと言ってもいいからな。」

「ありがと。ふう…行ってくるか…」
指原が少し寂しげな表情で部屋を出て行った。

半沢が見届けた、アイドル・指原莉乃の最後のステージ。
そこには、紛れもなくトップアイドルとしての指原莉乃の姿があった。

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