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東京中央銀行の本店地下には、殆ど使われる事の無い部屋が幾つもある。
半沢と渡真利は採光窓からかすかに漏れてくる光だけが微かに明るさを運ぶ部屋の片隅に立っていた。
かつてこの部屋で、いつ果てる事もない嫌がらせに精神を病んでしまった近藤が、そこに入ってきた。

「どうなった?やはり…か?」
近藤が渡真利に向かい静かに頷いた。沈痛な表情のままだ。
「東京中央フィナンシャルグループは今回のAKSの件に関し、ほぼ全面的に非を認める公式のアナウンスを発表する事になった。粉飾決算を教唆したのではないか?という声に対しては一応否定。公開審査に関し、粉飾を認めつつAKSの圧力に逆らえなかった。主幹事を取る事に執着した東京セントラル証券の取った対応は、誠に遺憾であります…ってスタンスさ。さっき、広報部の会議で最終結論とされたよ。」
「それじゃあ、金融庁には?」
「ああ、それだな…しかるべきポジションの者の首を差し出す事で、引受業務の登録だけは取り消さないでくれって形で落とし所とするみたいだな。」
「しかるべきポジションの者って…」

「小林社長と…俺か。」
半沢が草臥れた椅子に腰をおろしながら言った。
「そういう事だ。]
近藤の声は重々しかった。眉間に深く皺が寄っている。
「AKSは?どうなるんだ?証取法でやられる事は目に見えてるだろう?」
「ああ。どうやら、向こうも同じようにして凌ごうとしてるようだな。窪田社長と湯浅室長を解任、告発する方向で進んでいるようだ。」
「ちょっと待てよ。秋元は?秋元康はどうなんだ?明らかに今回の黒幕はアイツだろう?」
渡真利が納得いかないように言葉を挟んだ。
「トカゲのしっぽ切りってのは、そういう事だよ。渡真利。秋元はあくまでも大株主でグループのプロデューサーだ。AKSの経営自体には関与していない…そういうシナリオだろう。」

「しかしなぁ…悉くやられちまったんだな…まさか、議事録まで改ざんされてるとは。半沢…今度こそマズイな。こういう状態の事、なんで言うか知ってるか?」
「ああ。絶対絶命…って言うんだろ?」
渡真利が人差し指を空に向けて口を窄めた仕草をする。

その時、半沢の携帯が鳴った。
「半沢です。ええ。今、銀行の本店に来ていますが。来客ですか?いえ、その方の事は存じていますが…約束はしていないですね。どうしても私に会いたい?申し訳ないですが、今日は取り込んでいると言ってお断りしていただけますか?はい。宜しくお願いします。」
渡真利と近藤が半沢の様子に首を傾げる。
「企業部の受付からだ。飛び込みで来客があったみたいだ。」
「飛び込みで?誰だ?」
「ああ、島田晴香といってな…」
「なんだ、お前が好きだった子じゃないか。お前、そんなヨロシクやってる場合じゃ…」
渡真利が苦笑いを浮かべながら言いかけた言葉を遮るように、再び半沢の携帯が鳴った。
「はい。ええ…どうしても…と?はい…何ですって?分かりました。すぐ戻ります。ええ、15分…いえ、10分で戻ります。応接にお通ししておいてください。」

「すまない。すぐに戻らなくてはならなくなった。」
「おいおい、戻るって?どうしたんだ、急に。」
「島田晴香が連れて来てるというんだ。大場美奈も一緒らしい。」
「連れて来てる?大場?おい、半沢、どうしたんだ?」
「仲俣汐里だ。仲俣を連れてきているんだ。」

「仲俣って?AKSの…湯浅の下にいるあの子の事か?」
そう言う近藤に背中越しに手を振り、半沢が薄暗い部屋を慌ただしく出て行った。

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