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「奈和から聞きました。私、結局何も出来なかったけど…やっぱり、こうなるんじゃないかって思ってました。指原さんの差し金だったんですね。」
「ああ。指原さんというよりは、恐らくは運営の…といったところだろうな。大場さん、あなたはやはりこうなると?」
半沢が大場に笑顔を向ける。大場も笑顔でそれに答えた。

「あの…私たちはうまく嵌められたって事なんですよね?」
島田が半沢の目をうかがう様に話しかける。
上目遣いの表情は、これまでに見たことがないものだった。
「嵌められた…のかもしれないな。」
「私達が卒業して空いた枠には、SKEの主要メンバーが入り込む…そういう計画だったんですね?優子さんや柏木さんが卒業間近って事はなんとなくわかっています。そしたら一気にAKBの人気落ちちゃうし。今、選抜メンバーの次にファンがついてるのって、悔しいけど支店のコたちですもんね。」
島田が斜め下に目線を向けて言う。
半沢はその言葉に相槌を打つでもなく黙ったままでいた。
手のひらを胸の上で組み、椅子の背もたれに体を預ける格好になる。

「でもですね、SKEのコ達がそれを拒むって事は、この計画はナシになったって事ですよね?それなら、私達が無理に辞めなくても…もちろん、私達も頑張らないといけないのはわかっています。でも、私達だってそれなりのファンも持ってるし…あの、半沢さん。今からでも申請したストックオプションの申し込みってナシに出来ませんか?」
「それは可能だ。しかし…」
「しかし?何ですか?何か手続き的に難しいことがあるんですか?」

半沢はそのままの姿勢で目を閉じた。
大場と島田は顔を見合わせた。若林も首をかしげる。
数分の沈黙がとてつも無く長い時間に感じた。

「島田さん。私は主幹事証券の立場として、AKSの企業価値向上に努めなくてはならない。より企業価値の高い企業を資本市場に送り出す、それが私の使命だ。」
「は…はい。おっしゃってる事の意味はなんとなくわかります…けど。」
どういう意味?島田はそう答えながらも半沢の言葉の意図をつかめないような表情を浮かべた。

「私は、その使命を果たすために、君達23名の卒業というシナリオをそのまま実行するようAKS経営に進言するつもりだ。」
「部長?今なんと?このまま、はるぅ達を切るって?どうして?」
若林が思わず声を上げた。大場も島田も一瞬表情を凍りつかせた。
「その通りだ。理由は先ほど言ったとおり。AKSの企業価値を向上させるためだ。空席は内部の昇格や新規メンバーの募集で埋める事になるだろう。」
半沢は視線をまっすぐ島田に向けて言った。
島田も半沢から目線を外さない。
「半沢さん…私達の味方になってくれないんですか?」
予想外の反応だったのだろう。島田の言葉から力強さが消えた。
大場もうろたえたような顔つきになった。
「半沢さん、島田推しって言ってましたよね?お願いします。みんな、頑張りますから。いや、これまでだって頑張ってきたんです。」
「頑張る?大場さん、島田さん。あなた方は何かな?アイドルだろう?アイドルとは、プロフェッショナルである。俺は君達をただの可愛い子がお遊戯をしてるだけのグループとは思っていない。努力する事は当たり前だ。しかし、全ての努力が報われるなど絶対にあり得ない。ただ、成功したものがすべからく努力しているという、それだけの事だ。そして、アイドルというものには…残念ながら賞味期限というものがあるんだ。一過性のブームで終わるならそれでもいい。しかし、俺はこのAKSという会社を永きに渡り成長させていかなくてはならない。成熟させていかなくいてはならないんだ。その為に、新陳代謝は決して鈍らせてはならないんだ。」

半沢はそこまで言うと、再び目を閉じた。
再び長い沈黙が場を支配する。

「半沢さん、よくわかりました。お忙しいところ、突然お時間頂いてすみませんでした。美奈、行こ。」
「行こ…って。島田、いいの?」
「良くない…良くないけど、半沢さんの言う事、もっともな事だもん。それに…」
「それに?」
島田は大場のその問いに答えず、立ち上がって半沢に深く頭を下げた。
「半沢さん…AKBをお願いします。きっと、半沢さんならもっともっと素敵なグループにしていってくれるような気がします。そうなると、私も元AKBって事で胸を張れるかな?」
「君が今までやってきた事は、十分胸を張るに値すると俺は思っている。」
半沢が目を開き言った。
「ありがとう。私、きっとまた半沢さんに会えるよう頑張ります。いや…そうなってみせます。一人のアイドル…いや、芸能人かな?として。」

島田が笑顔を見せた。目にはいっぱいの涙がたまっている。
半沢が立ち上がって両手を島田に差し出した。
「あ、最後の握手会ですね?」
「いや…次の個別、ちゃんと券取ってるから。そのときはちゃんとファンとして握手させてもらうよ。これは、君への激励の握手だ。」

島田が半沢の手をしっかりと握り返した。

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