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「なんですって?部長、本気ですか?」
「ああ。もちろん。私は冗談を言う時は時と場合を選ぶ。若林、今はその時ではない。」
「しかし…僕達は東京セントラル証券の社員です。会社の利益をみすみす逃す事になる行動が許される訳が…」
「会社の利益?何をもって利益を上げる、そう言うんだ?IPOの主幹事を取って数億の引受手数料を稼ぐ事か?違うはずだ。前にも言ったよな?真の企業の成長の為に最善の資本政策を実現させる。それが、俺達証券マンの使命のはずだと。若林、もう一度言う。今回の株式公開、AKSにとって最善の施策では断じてない。」

半沢の話が熱を帯びて来たその時だった、デスクの上に置いてあった半沢の携帯電話が鳴った。
待ちわびていたように半沢が電話に出る。

「もしもし、半沢だ。渡真利か?どうだ、わかったか?…ああ…そうだ…うむ…」
電話の向こうから渡真利忍の興奮した声が漏れ聞こえてくる。
半沢の顔も徐々に紅潮し始めて来た。
「やはり…やはり、そうか。ああ、それだ。間違いない。そういうからくりか。
わかった。ありがとう渡真利。やはり、持つべきものは優秀な同期だよ。」

半沢が電話を切り、苦み走った笑顔を若林に向けた。
「どうやら、ギリギリ間に合ったようだ。全部ではないが、ようやく点が線に繋がったよ。」
「間に合ったって…AKSの経営会議は明日ですよ?その翌日には取締役会で最終スキームが決議されてしまいます。そうなったら…僕達には何も手出しできませんよ。」
「わかってる。若林、俺はただのファンとして彼女たちの為にこんな事を考えているんじゃないぞ。今は時期尚早だと言っているだけだ。もっと、きちんと体制を整えさえすれば、素晴らしい形でのIPOは可能だと思っているんだ。俺が納得できないのは、なぜ“今”なんだという事だ。あまりに拙速すぎる。しかし、その理由は渡真利が調べてくれたよ。俺の同期だ。融資調査部のオプ(調査員)をやってる男だが、こういう寝技をやらせたら、アイツの右に出るヤツを俺は知らない。」

若林が身を乗り出した時、半沢のデスクの電話が鳴った。

「はい、半沢です。はい…来客?いえ、約束はありませんが…どなたです?…え?ええ。
いや、悪戯ではありませんよ。分かりました。来客応接にお通ししてください。」
「どうしました?誰です?」
半沢がハンガーにかかっていた上着を着ながら答えた。
「島田…晴香と大場美奈だそうだ。」

島田晴香と大場美奈は、まるで就職活動中の学生が着るようなビジネススーツを身にまとっていた。
二人とも意外に良く似合う。半沢も若林もその姿に思わず表情を柔らかくした。

「いや~まるでOB訪問を受けたみたいだ。なあ、若林。」
「ええ。僕は今でもリクルーターやってますからね。でも、こんな二人が来てくれたら即内定じゃないですか?」
「もっともだ。」
突然の訪問の意図を図り兼ねていた半沢が、その場の空気を和ませるように軽口を叩いた。

「あ…私達、証券会社の本社に伺う事なんて初めてなんで…一応、お母さん…母に失礼のないカッコで行きなさいって言われて。あの、変じゃないですか?」
「島田さん、大丈夫だよ。全然失礼なんかじゃない。…でも、そろそろ話を聞こうか?まさか、本当にAKB卒業後の就職活動の相談に来た訳ではないだろう?」

半沢は作り笑いを消して二人に向き合った。

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