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サンシャイン栄の2階にあるSKE48劇場。
ステージの一部照明以外は落とされ、先ほどまで行われていた公演の熱気も薄れ始めていた。
そのステージの上で車座になって座っている数人のメンバー達。
しかし、もう15分近くになるだろうか、誰も言葉を発する事無く、その分だけそこの空気が重くなっていった。

「ね?ね?私の説明わかりにくくないですよね?ちゃんと伝わってますよね?」
沈黙に耐えかねたように古畑奈和が口を開く。
それを聞いてもメンバーは下を向いたままの者や、隣どうしで顔を見合わせるだけの者ばかりで相変わらず声を出す事はしない。
古畑も困った顔で頬を膨らませるだけしか出来なかった。

私達が表舞台に立つチャンスが来たんだ。
そう表現したのは指原の指示だ。
「今のSKEは飢えてる子が多いはず。単独での名古屋ドームも成功させた。今度の選挙でも去年以上の躍進を見せるのも確実。一方で、本店優遇の体制に不満を持っているのも間違いない。奈和、アンタだってそうでしょ?」
指原の自信たっぷりの言葉と表情が頭の中に浮かんだ。
指原さん…なんか、指原さんが言ってた反応にならないんですけど…
どうしたらいいんでしょうか…

「ねえ、奈和自身はどうしたいと思ってるの?」
最初に口を開いたのは松井珠理奈だ。
よかった…やっぱり珠理奈さんだ…兼任って窮屈なポジションにいる事にジリジリしてるのは私と同じなんだ。そうだ、珠理奈さんなら私の言ってる事もわかってもらえるはず…古畑はほっとした表情で珠理奈を見た。
しかし、それに続いた珠理奈の言葉は古畑が期待していたものとは全く違っていた。
「奈和…まさか、本気でそんな誘いに乗ろうって言うつもりじゃないよね?AKBのメンバーが大量に辞めるのはわかったよ。辞めるのか辞めさせられるのかはこの際どうでもいいとして。で、その空いたポジションに私達が移籍できる?兼任じゃなくて移籍?ねえ、奈和。その話のどこがいい話なの?」
「え…あの…珠理奈さん…いつも言ってるじゃないですか。私の目標っていうか野望はAKBのセンター取る事だって。だったら…」
「その通りだよ。でも、違うよ、奈和。SKE48の松井珠理奈としてセンター奪わなきゃ何の意味もないんだよ。なんで、ワタシがずっと兼任ってポジションを引き受けてると思う?」
「それは…その方が知名度とか露出とか…自分にとって…」

古畑が口ごもる。そこに言葉を被せてきたのは大矢真那だ。
「奈和ちゃん。珠理奈がどんだけ重圧に苦しんでるか知らないの?あなた、同じチームに兼任してていったい何を見てきたの?」
大矢の口調がいつになくキツい。
普段は柔らかくて優しい人だけど、こうして時々びくっとなる程怖い表情をする事がある。そうだ…曲がった事が大嫌いな人なんだった…

「あの…あの…」
古畑が思わず声を詰まらせる。
大きな瞳からは今にも涙がこぼれそうになっていた。

かしゃっ

気まずさの重量がどんどん高まるその場の空気を切り裂くように、携帯のシャッター音が響いた。


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