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「ね?奈和。その話、やっぱり無理があるって。それに、智也さんに全部バレてるみたいだし。って事は当然戸賀崎さんだって知らないわけないし。このまま闇雲にやったトコで大人たちに潰されて終わりになっちゃう。」
「でも、島田さん、このままじゃマズいって事わかりますよね?実際、私たちチームKの状況見ても。こないだの公演、定員割れしたって話じゃないですか。仲俣さん達が企んでるリストラって脅しや冗談じゃないと思いますよ。」

劇場公演の終わった後、送迎のバスで降ろされた日暮里のスタバ。奥まった席で内緒話をするような格好になって集まっているのは、古畑と島田、そして宮崎美穂と内田真由美だ。
「でも、本当にやれるのかなぁ?リストラなんて。今までだって散々噂あったじゃん?でも実際には何も変わらないし。今回も仲俣の暴走なんじゃない?あの子、秋元先生の肝いりで戻って来たからっていい気になってるだけなんだよ。」
宮崎の口調はどことなく苛立ちが込められていた。同意するように頷く内田の表情からも同じような感情が伝わってくる。

「島田さんは?島田さんはどう思うんですか?島田さんまで、この人達みたく安穏としてる訳じゃないですよね?」
古畑も苛立っていた。こんな風に話をするのはもう何回目になるだろう。本当にこの人達に危機感ってあるんだろうか?
「安穏ってどういう意味かなあ?自分が推されてるからって何かいい気になってない?はるぅも甘い顔してちゃ駄目だろ。優子さんにリーダーとしての意識持てって言われてるんだろ?がつんと言ってやりなよ。第一、アンタにどれだけの力があるって言うんだよ、奈和。」
島田が言葉を発する前に宮崎が古畑に噛み付いた。
「はぁ…わかりましたよ…ある意味その無神経さがあったから、ここまでそうしてAKBにしがみついてられるんでしょうからね。」
「ちょっと奈和、それは言いすぎだって。みゃおさんも落ち着いて…ん?何この紙?」

古畑が何も言わずに島田に一枚の紙を手渡した。
A4サイズのものを4つに折りたたんである。

「こ…これ。奈和、いったいこれをどこで?」
島田が目を丸くする。手に持った紙が小刻みに震える。
「みなさんが一番見たいものでしょ?宮崎さん、これ見てもさっきみたいな戯言を言ってられますか?」
「ちょ…これ、マジなの?アンタ、冗談とか言うの無しだよ。洒落にならないから。」

タイトルこそついていないものの、そこに並んだ名前を見れば、島田が仲俣の話を盗み聞きした時に話題になっていた「リストラリスト」である事は一目瞭然だった。そこには、2期から12期までの多くのメンバーの名前があった。宮崎も内田も載っている。もちろん島田の名前もだ。
「やっぱり…そうだったんだ…なんとなくそんな風に思ってた。」
内田がその場に座り込んだ。目が虚ろだ。

「わかった。でも…奈和、ここにはアンタの名前はない。なんで、自分のことのように私たちに構おうとしてるんだよ?」
宮崎が急に消沈したような顔になり聞いた。
「だって…悔しいじゃないですか。私、兼任とはいえ皆さんと同じチームで頑張ってきた仲間だと思ってます。それが、こんな風に簡単に用済みみたく切られるなんて。」
「奈和…ごめんな、さっきはついかっとなっちゃって。ねえ、私達はどうすればいいと思う?もうこんな風に決まってる事なら、私達がいくら抵抗したって無理な事はわかるんだけどさ…」

「ここは…恩を売っとく方がいいと思います。」
「恩を?すんなり大人しく身を引きますってこっちから言うとか?」
それは納得いかないよ。島田がそんな風に古畑に言う。
「いえ、黙って何も言わずなんて事。それじゃ先輩達が余りにも不憫です。幸い、先輩たちは皆さん事務所に所属しています。あとは、いかに個人でプロモーションしてもらうかですよ。」
「プロモーションって、AKBのバックボーンが無くなって、どうやって事務所が金かけてくれるってんだよ?」
宮崎が聞く。だが、先ほどのテンションは無い。語尾の弱さがそれを物語っていた。
「お金は…自分たちで用意すればいいんですよ。事務所には名前と力だけ出してもらえばいい。そうすれば、仮にも元AKBです。事務所だって嫌って言いませんよ。」
「奈和…それはわかるけどさ…お金なんて、どうやって用意するんだよ。まさか、親に出せとか言わないよね?」
「いえ、島田さん。いくら島田さんのご自宅が熱海の老舗旅館でも、内田さんのご実家が大きな焼肉屋さんでも、そこまでは言えないでしょう?退職金を頂いちゃえばいいんですよ。」

「ス…ストックオプション?」
島田が思いついたように言った。古畑が黙って頷く。
「奈和…アンタ、そこまで考えてくれてたの?」

古畑は大きな目を潤ませて島田の顔をまっすぐ見た。


…大丈夫だな。
これで、この人達はオッケイだ。
古畑は心の中で舌を出して笑った。


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