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「いいか玲奈、もうお前は大人なんだ。いい加減聞き分けなさい。」
「でも、智也さん。今までずっとガマンしてきたじゃないですか。確かに智也さんが名古屋に来てからというもの、色々と良い事が続いてるのも事実です。単独ドームだって、数々のタイアップだって。智也さんに力があったからだって事もわかってます。みんなそう思っています。でも…」
「でも?玲奈、お前、自分の事はどうなってもいいと思っているのか?それに、俺が何も知らないとでも思ってるのか?」

最近、芝の玲奈に対しての言葉と態度は厳しさを増していた。
支配人に就任したばかりの頃は何となく頼りなさすら感じていた。頼りなさというか、何を考えているのかわからないといった表情は弱々しさすら感じさせるものだった。
ところが、芝のビジネス才覚は確かなものであった。そして、徐々にではあるがメンバーをしっかりコントロールし始めて行った。
前任の湯浅が築いた支配人とメンバーの距離感。どこか、父親と娘のような距離感を芝は一変させた。
あくまでもそれは「マネジメント」だった。その柔らかな人当りから優しさを感じさせる芝だが、メンバーへの対応へはどことなくビジネスライクな所さえあった。

「いいか、玲奈。面子は大きく変わったとはいえ、Kの連中は俺が見てきた面子だ。いくら奈和が何かを企んでるかもしれんが、変な動きは全部こっちに伝わってきてるんだよ。」
玲奈は芝を見上げるような形で見た。
やっぱりこの人はコワイ人だ。力がある人は得てして高圧的になりがちなんだけど、この人にはそんなところが全然ない。だからこそコワイんだ…
やはり、この人は的に回しちゃいけない人なんだ。でも…だからこそ、味方に出来たら…

「智也さんは、今はSKEの支配人ですよね?」
「ああ。そうだよ。でもな、玲奈。同時に俺はAKSの社員でもある。本店の意向に忠実な犬だって言われてるのも知ってるさ。お前らが名古屋じゃなく関東…いや、本店寄りのマネジメントに不満を持っているのも良くわかる。だがな、名古屋も大事かもしれない。が、本店あってこそのSKEじゃないのか?」
「智也さんには野心とかないんですか?」
玲奈が大きな目を芝に向けた。

玲奈が言いたい事は芝にも良くわかっていた。
野心がないといえば嘘になる。むしろ、俺に与えられたポジションはその野心を満たす事が出来るものなのかもしれない。
しかし…それは諸刃の剣だ。俺には全てを失ってまでも野心を優先出来る強い男じゃない。
それに、あの男のようになるのもゴメンだ。ただ人がイイだけで無能だとの烙印を押されたあの男のように。

「あの半沢さんってヒト。智也さん、どう思います?」
「半沢?ああ、あの証券マンか。相当のキレ者らしいな。ただ、所詮はウチが上場する事でのお零れをいかに預かるかしか考える事しか出来ない小間使いだよ。あの男が幾ら切れるからといえ、今から出来る事は何もないさ。」
芝は玲奈に背中を向けた。もうこの話はいいだろ?その背中がそう言っているようだった。


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