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劇場の客席に座ったメンバーを前に半沢は自分が少し緊張している事に気がついた。
さすがにステージに登る事はしていないが、立ちあがった半沢を全員が上目遣いで見る形になっているせいかもしれない。

「今日の公演、とても楽しかったです。ありがとうございました。」
「立最にいましたよね?そんなエライひとって思わなかったから、ワタシ遠慮なしに爆レス送っちゃいましたよ。」
「ホント、ホント。ノリも良かったし。私も。気づいてくれてましたよね?」
内山命と竹内舞が切りだしてきた。半沢の緊張感は二人の気さくなノリに一瞬で取り払われた。
「ええ?ステージの上からそんな客席の事わかるものなのかい?それに、私の事をあんな短い時間の間で覚えていてくれたと?」
「私も覚えてますよ。だって、公演でスーツ二人組なんて珍しいし。」
「ね。ね。そーだよね。」
頷いているのは小林亜実と柴田阿弥だ。周りのメンバーも同じような表情を浮かべている。

「KIIだけでなく、他のチームの公演も見て行ってください。半沢さん。同じように楽しめるのを保障しますよ。」
一段と高い声で松井玲奈が言う。半沢はその声を意外な感じで聞いていた。
玲奈の声は全体を仕切る立場での発言というよりも、むしろ「なんでKIIだけ?」といったちょっとした抗議主張のようなトーンが入っていた。
優等生…そんなイメージで玲奈を見ていた半沢の印象が一瞬で変わるものであった。
「ありがとう。それはもちろん、ぜひお願いしたいと思っている。が…今日はちょっと幾つか皆さんに聞きたい事がある。玲奈さんには申し訳ないが、今日ステージを見たばかりなので、まずはKIIのメンバーに…」
「はい!何でも聞いてください!何から話せばいいですか?」
高柳明音が立ちあがって甲高い声を上げた。この子はイメージ通りだ。思わず半沢は笑顔を浮かべた。

「あかり…須田亜香里さん。」
「はい?あ、亜香里ですかぁ?あ、今、半沢さん、あかりんって呼ぼうとしたでしょ?いーですよ、あかりんって呼んでください~」
「あ…いや、その…」
須田の甘ったるい話し方に戸惑う半沢に周りから笑いがおきた。若林も笑いをこらえている。
「須田さん。あなたのステージでの輝きはとにかく素晴らしい。まるで、シアターの女神とはあなたの為に作られた言葉かと思う位だ。」

ひゅー
敢えて思いっきり歯の浮くような美辞麗句で切りだした半沢にメンバーから笑いと茶化すような声が上がる。だが、それは決して変なトーンではない。いつも取ってるリアクション・・・そんな風に感じた。
半沢は続けた。

「これまであなたは、ステージの隅の方が立ち位置だった。それは私も知っている。それが新チームになりセンターを任される事となった。普通なら気負いがあったり、戸惑いを感じたりするものだ。それが実に堂々とした振る舞いだった。まるで、今までずっとセンターで脚光を浴びていたかのように。やはり、新チーム体制になって多少時間も経っている事で慣れてきたのかな?」
「慣れた…のかなぁ?」
須田が口を結んで困ったような表情になった。
「半沢さんにも見せたかったですね。あかりんは、KIIでは最初からあんな風に堂々としていましたよ。」
「最初から?なるほど、やはり須田さん。自己顕示欲が強いのは、芸能人として適性が高いという事です。すばら…」
「あの…亜香里、センターになったから張り切ってる訳じゃないですぅ。ずっと…ずっと。亜香里の事を見てくださってる方にとっては、亜香里がセンターじゃないですか。だから、どこに立ってたってそこがセンターなんです」
須田の言葉は力強かった。表情は変わらず笑顔だが、その言葉には半沢を唸らせる説得力があった。
周囲のメンバーもいつの間にか真剣な表情になっている。

「なるほど…では、次に…玲奈さん。いいですか?」
「はい。何でしょうか?」
松井玲奈が立ちあがった。すらっとした長身。背筋の伸びた姿勢がその凛とした美しさを際立たせていた。
しかし、その背中には燃えるようなオーラがある。半沢は感じていた。数多の成功した経営者がまとっていたものと同じオーラだ。この子をただの可愛いアイドルと考えて接してはダメだ。今回のビジネス、彼女もまたキーパーソンの一人に間違いない。

「名古屋…という地をどう考えますか?」
「名古屋?私は…私たちはこの名古屋という場所に育てて頂いたと思っています。名古屋のファンの熱気があってこそのSKE48です。」
「なるほど。しかし、SKEのファンには関東圏の人間が多い事も事実だ。握手券の売れかた、名古屋ドームの来場者の分析等からもそれを裏づけるデータもある。君もそれは感じているんじゃないかな?」
「…わかっています。それでも…私たちはSKE48なんです。半沢さん、何がおっしゃりたいんでしょうか?」
玲奈の目線が強くなる。いかん…ついこの子の強さに全てをさらけ出してしまいそうになる。
まだ時期尚早だ。それに、多くのメンバーが揃っているこの場で切りだす話でもない。

「失礼。確かにその地元への想い。とても大切な事だね。ありがとう。では、話をちょっと変えようか…珠理奈さん。」
「はい!私ですね。何でしょうか?」
「君は…ちなみにあのダジャレはいつまで続けるのかな?」
「えええええ?そっから来ますか?もっと、こう真面目な話じゃないんですか?なんか、あかりんと玲奈ちゃんと扱いが違うような気がするんですけど…」
「いや、とても大事な事なんだが?」
半沢の言葉に周囲から爆笑がおこった。


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