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「部長。僕、部長の事見直しましたよ。あんなに弾けるヒトだったんですね。」
ソファの隣の席でまだ引かない汗を額に浮かべた半沢に向かって若林が言った。
サンシャイン栄のすぐ近くにあるオフィスビルの洒落た応接室に二人は通されていた。
目の前のコーヒーから芳しい香りが立ち上っている。

「弾けるって…いや、若林…俺は正直圧倒されたよ。なんなんだ?いったい。」
「なんなんだって言っても…部長、劇場公演は初めてなんですか?」
「馬鹿野郎。初めての訳ないだろう。俺を何だと思ってるんだよ。秋葉原の劇場にはもう数えきれないほど行ったさ。最初に入ったのはパジャドラの頃だよ。シアターの女神公演なんて何回見た事か。あの公演でのゆきり…いや、柏木由紀なんて、本当に女神っているものなんだなって思ったくらいだ。それなのに…」
「あれがKIIですよ。」
若林が得意げな表情を浮かべた。
「いや、お前がそうやってドヤ顔をするのも良く理解できるよ。実は、俺は名古屋という場所に余りいいイメージを持っていなかったんだ。仕事という面でだな。それは、お前にもわかるだろ?」

若林は頷いた。ビジネスの世界、特に金融業界では名古屋は「鬼門」と言われる事が多かった。トヨタ自動車というワールドクラスでのトップ企業を擁し東京大阪に次ぐ商圏を持ちながら、その排他性の強さからなかなかリレーションを作るのが難しいというのがその理由だ。逆に一度信頼を得る事が出来れば、深い付き合いが可能になる。「営業担当の役員になる為には名古屋支店長を経験する必要がある」と言われるのも、そこから来ていると言っても良いだろう。

「という事は、SKEは部長のお眼鏡にかなったという事ですね。」
「ああ、あのステージを見て、その魅力を感じないヤツがいるならお目にかかってみたいものだ。とにかく、素晴らしい。まずだな…」
半沢の口調が強くなりかけた所で応接のドアがノックされた。
細身で二枚目の男が一礼して半沢の前に立った。内ポケットから名刺入れを取り出し、中から出した名刺を半沢と若林に渡す。半沢と若林もそれに倣った。
「はじめまして。劇場支配人の芝と申します。お二人の話は本部の湯浅と仲俣から良く聞いております。」
「芝支配人。本日は素晴らしい公演をありがとうございました。」
若林が笑顔で芝に言った。

「若林さん。視察にお越しになるのあれば、おっしゃっていただけたら良かったのに。招待席もご用意出来たんですよ。そうすれば、もう少し良い席で見て頂けたんですが…」
「いえ、なかなか当たらないのはわかっていたのですが…今回、たまたま新規でモバイル登録したこちらの半沢の枠で当選したものですから。やはり、新規は一度は抽選に当たるという都市伝説は本当のようですね。」
「はははは…その辺りはノーコメントという事で」
芝の笑い声に半沢も笑顔を見せた。

「劇場公演は立最こそが最上の席というのが私の持論です。今回は運よくその席で見せて頂けました。何よりですよ。しかし、芝さん。本当に素晴らしいステージでした。」
「ええ。私どもSKE48の真骨頂は劇場公演の熱さだと思っております。これは、どのグループにも絶対に引けを取りません。いえ、口はばったい言い方ですが、私どもこそが48Gでナンバーワンと自負しております。」
「なるほど。旧Bファンの私からしても、今日のステージを目の当たりにして、その言葉に異論を加える事は出来ません。実に説得力の高いものだ。」
「ですから…このSKE48をグループの中核に据え、全体の再編を行うという秋元先生の考え方は…」
芝はそこまで話して思わず口を手で押さえた。しまった…といった表情になる。
「構いませんよ、芝さん。その情報は既に私たちも持っております。」
半沢がバッグの中から厚みのある書類を取りだした。
「中期事業計画書の目玉の一つですね。保有コンテンツ力の最大化。企業として至極有用な戦略です。そして、今日、ステージを見て実感しました。秋元先生のプロデューサーとしての見識は間違いがない…と。」
半沢が言うと、芝は少し安心した表情を浮かべた。
「では…メンバーにお会いして頂きましょうか。主要メンバーを劇場で待たせております。」

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