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「はぁ…」
「こら、ため息ばっかついてるとツキが逃げちゃうよ?何見てるの?」

ビジネスマンでほぼ満席になった新幹線の車内。須田亜香里が隣の席の木崎ゆりあが目を落としている小さな紙切れを覗き込んだ。細かい数字と文字がびっしりとかきこまれている。

「今日いったん名古屋に戻って明日の始発でまた東京でしょ?ん…でそのまま大阪の握手会で…あ、撮影入るって言ってたけど、まだ詳しいこと聞いてないし。」
ペーパーに書き込まれた事項を手元のスケジュール帳に書き写しながらまた木崎は小さなため息をついた。
「そうだよねぇ。あかりも…あれ?あれれ?」
自分のスケジュールを確認しようとカバンから手帳を出そうとした須田だったが、なかなかその所在を見つける事ができない。パンパンに膨らんだカバンから何枚かのペーパーがこぼれ落ちた。
「もう、あかりん。落ちたよ。コレ…」
仕方ないなあ…そういった笑い顔でペーパーを拾い上げた木崎の視線がその紙の上で止まった。
「ああ、ゆりあもそれもらった?」
「うん。でも、全然意味がわからないんだ。何?株を買いなさいって意味?」
「えーっと、そういう意味じゃないと思うよ。あかりもこういう事全然詳しくないし。」
「ストップオークション?だっけ?」
「ストックオプションだよ。もう、ゆりあ。ヤフオクじゃないんだから。」
前の席に座っていた松井玲奈が通路側から顔を覗かせて言った。

「玲奈さん知ってるんですか?その、なんとかなんとかって」
難しい話をしても通じそうにないなぁ。玲奈は木崎を仕方ないなぁといった表情で見た。決して馬鹿にしているという意味ではない。むしろ、こんな話、私だって理解するにはそれなりに色々と勉強する必要があった。
「あのね、ゆりあ。例えばここに時価100万円分のダイヤがあるとするね。金塊とかでもいいや。普通にお店で買おうとしたら100万円するの。」
玲奈の話に須田も興味深そうな表情を見せる。
「それをね、今日から1ヶ月の間あなただけ10万円で買える権利をあげますよ〜っての。その権利の事をストックオプションっていうのよ。」
「え?じゃあ、10万円で買ってすぐに売ったら90万円の儲けって事じゃないですか?も〜玲奈さん。そんなウマい話あるわけないじゃないですかぁ。それってなんか詐欺っぽいでしよぉ?」
須田が悪戯っぽい顔で笑った。玲奈も須田の言葉に頷く。
「そうだね。でも、これは真面目な話みたい。芝さんもそう言ってたし。ただね、実は今度のストックオプション、買える値段はもう決まってるの。一つ…あ、一株ね300円。」
「すいません…ワタシ、ほんっとうにバカで。つまり、その300円が幾らになるんですか?」
「それはね、私達の頑張り次第で変わってくるのよ。」
「私達の頑張りで?え?玲奈さん、本当に意味がわからないんですけど…」

そうだよね。正直、私も株の事なんて全然わからない。でも、AKBの運営会社が上場する事位の意味は何となくわかる。そして、人気やCDの売り上げが上がれば株が上がるって事も。芝さんは「お前たちにかかってるんだぞ。頑張れよ。」って言ったけどまだピンとこない。私たちが頑張れば株価はいくらになるの?1000円?3000円?1万円?だいたい株で儲けようなんて事考えるの…いや、思いつく子なんているはずないでしょ?ゆりあやあかりんだけじゃない。みんな意味不明って反応になるのは目に見えている。
それよりも、もっと運営には考えてほしい事が山ほどある。

どういうこと?こうじゃない?いや、違うよぉ…

少しふざけながら話を続ける二人に柔らかな微笑みを送り、玲奈は自分の席に座り直した。
深く深呼吸をして目を閉じた。
名古屋までの1時間半ちょっとの時間。いつも着く直前にウトウトしちゃうんだよなぁ…


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