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ステージの上で念入りなストレッチ。そして鏡に向かって昨日までのレッスンの内容を繰り返す。鏡には客席になる部分にブルーシートが掛けられていた。今日からいよいよ最後の内装工事に入るって話してたっけ…

10月30日に合格者が発表されてすぐに公演に向けてのレッスンが始まった。私の知ってる歴史の中では当初12/1と発表された初日が直前になって…確か今日の事だ…1週間延期になるはずだ。公式には工事の遅れという事だったが、誰もが知っていた。12/1には到底人様にお見せするレベルに達していなかった事が本当の理由だって。

「はるぅ。お母さんとは仲直りできたの?」
声をかけてきたのは折井あゆみ。年長者という事だけでなく、その面倒見のいい性格でリーダー的存在としてメンバーからもスタッフからも信頼されていた。
「あゆ姉さん…いや、なかなかうまくいかないっす。」
「だから、さん付けはやめてよね~。姉さんって呼ばれるだけでなんか年寄りっぽいし~」
前田や小嶋、今この世界でもメンバーとしている板野や峯岸の事は島田の記憶の中でちゃんと記憶がある。だが、実際今のチームを引っ張っているのはこの折井や大島麻衣、佐藤由加里や駒谷仁美といった面々だ。彼女たちの事は島田自身良く知らない。もちろんどうんな風にAKBで活動をしてそして去っていったかは知っているのだが、実際にこの目で見てきたわけではない。
「いや…なんか自分先輩にそんな風にフランクに接するのが恐れ多いっていうか…」
「も~ホントはるぅは体育会系なんだから。ね、公演始まったらお母さんを招待してあげたら?きっとはるぅの姿を見たら、いい加減な気持ちでやってないって事分かってくれると思うな。」
島田の脳裏に夏の終わりの光景が浮かんできた。もちろん今の時代の。


「あんた、部活もサボっていったい何やってるの?新学期になってからは授業も…そこに座りなさい。」
お母さんが私に静かに話しかける時はヤバい…本気で怒ってる時だ。普段どなってる時は適当にやり過ごしてたらいい。でもこういうときはダメだ…
「お母さん…ワタシ、やりたい事があるんだ。」
「やりたい事?せっかくレギュラーになった部活をサボってまで?アンタまだ中学生なんだよ?学校までサボっていったい何をやりたいって言うの?」
「あのね…」
ダメだ…なんて話せばいいんだろう?そりゃ、いつかは話そうと思ってた。とうか、説得できるって思ってた。中学生が駄々をこねるよりはマトモに。だってそれなりの年だって食ってるんだしね。でも…やっぱ、20歳になってもお母さんはコワイや。というより、20歳って思って接してくれてないからなぁ。あたりまえだけど。頭ごなしにダメ!って言われちゃうとなぁ…
「晴香は歌ったり踊ったりするのが大好きだったもんな。中学生になってからはなんかジャニーズの事ばっかだったから、そういう気持ちは無いと思ってたけど、やっぱりお前も女の子なんだな。華やかな世界に憧れるんだな。」
「お父さん?」
思わぬところから助け舟だ。あ…でも、そういや前の時代の時もそうだった。お母さんの大反対をお父さんがなだめてくれたんだった。
「もう…何言ってるの?まさか、芸能界?アンタ何馬鹿言ってるの。どうせ騙されてるんでしょ?アンタが芸能界なんて行けるはずがないでしょ。それにお父さん、知ってたの?私には黙ってたの?」

結局最後までお母さんは許してくれなかった。でも、私が一度言い出したら聞かない事を一番良く知ってるのもお母さんだし。結局「でも、中学は転校とか出来ないよ。レッスン?とかも公演?とかも、全部家から通いなさい。ウチは旅館やってるんだからアンタと一緒に東京なんて出ていけないんだから。」とだけ言って席を立った。最後は涙声だったような気がするな。

「お父さん…なんで知ってたの?」
「ん?ああ、戸賀崎さんだったっけな。わざわざ会いに来てくれてな。お前には黙ってろって事だったんだけど。」
「戸賀崎さんが?」
「そうだよ。最初見た時はなんだ?この怪しい水商売風の男は?って思ったけど、会って話を聞いてるとわかった。ああ、この人は本当に純粋にお前の事を評価してくれてるんだなって。そして、決していい加減な男じゃないって事もね。」
「本当に?」
「ああ、こう見えても俺はベテランのホテルマンだ。人を見る目には自信がある。」
「ホテルマンって…ウチ旅館だし。」
「なあ…大変だぞ?そりゃ、新幹線使っても構わないが、毎日の事なんだろ?」
「うん。大丈夫。頑張れる自信ある。」
「そうか。お前がそう言うなら大丈夫だろ。しかし…夏休みの間に急に大人になった気がするな。一気にな。親としてはちょっと寂しい気がするよ。」
お父さんはそう言って煙草に火をつけた。いつも思ってたけど、そんなに顔をしかめて煙を吸い込むなら煙草なんて辞めればいいのに…でも、その時は本当に満足そうに煙を吐き出してた。

急に大人に…か。
でも、まさかお父さん、本当に私が大人になってるなんて思いもしないよね?
20歳だなんて。

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