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「鈴蘭から手紙が来たんですって?」
「ああ、これだ。字だけ見ると子供のものだけどな…」

秋葉原駅近くの喫茶店で島田は戸賀崎から封筒を受け取った。
白い無地の封筒の中には薄いピンクの便せんが入っていた。そこに書きつづられているのはどう見ても小学生の文字だった。だから余計丁寧で難しい言葉を並べた文面とのミスマッチがスゴイ。

「アイツなりに一生懸命考えて出した結論なんだろう。」
「でも…あの子こそアイドルへの思いが強い…そう思っていたのに。」
「ひょっとして、今がお前と同じ中学生なら考え方も変わったのかもしれないな。アイツは今まだ小学校5年生だ。」
「会いに行きましょうよ。会って…」
「目覚めてしまって、それで未来を変えるチャンスがある…その事に気付いた上で出した結論だ。尊重してやるべきじゃないのか?それに、多分鈴蘭は会ってしまって自分の決心が揺らぐ事を怖がってるのかもしれないな。」
「でも…」
「大丈夫さ。まだチャンスはある。鈴蘭だって気が変わるコトだってあるだろうさ。俺たちにはまだ8年近い月日が残されているんだから。」

残された月日…戸賀崎のその言葉については島田も良く…いや毎日考えていた。
最後の記憶が残っているあの日。2013年、中部国際空港から飛び立ったあの日が間違いなくタイムスリップの入口だ。向こうの世界ではそのあと…多分飛行機は墜落したか消息を絶ったか…してるに違いない。なんとなくそういう気がする。過去に戻った私たちがやがて必ずやってくる2013年のあの日…どうなるのかは全く分からない。飛行機に乗らなければいいのか…それともやはり何らかの形で私たちの人生はそこで終わりを迎えるのか…
でも…はっきりしている事が一つ。人間は未来を変える事が出来る。良く言われる言葉だ。過去は変える事が出来ないが…という言葉が付いてくる事も多い。でも…私にとっての「未来」は今のこの時代、つまり「過去」だ。歴史が変わる事でいったい何が起きるのか想像もつかない。が…もう決めたんだ。私は今の時代を悔いなく行きたいって。

「それで…おかしなコトって言うのは?」
「ああ…オーデションの締め切りまであと1月半あるんだが…」
「応募者少ないんですか?」
「いや、その逆だ。多い・・・・殺到してるって言ってもいいかもしれない。」
戸賀崎がテーブルの上に応募書類をカードサイズに縮小コピーしたものを並べた。
「なんか懐かしい顔ぶれ…ともちんさん、みぃちゃんも平嶋さんもいるんですね。そっか初期メンですもんね。え…?これは…?まさか…」
「そうだよ。島崎だ。」
「ぱるる?だって、まだ小学生でしょ?応募年齢に達してないんじゃ?」
「ああ。でも応募書類には中学1年生って書いてあるぞ。応募資格は13歳~としてあるが、中学1年生はOKとしてあるからな。」
「いいんですか?年齢詐称じゃないですか。」
「構わないさ。2期には年誤魔化して、それが面白いって言って合格したたヤツもいたからな。」
戸賀崎はにやっと笑ってアイスコーヒーを飲みほした。追加の注文をウエイトレスに告げる。
詐称ってそれノンティさんのコトじゃないですか…それにあれは若く誤魔化してたんだから。大丈夫…なのかな?

「それよりな…島田。ひょっとしたら歴史はもう変わり始めてるのかもしれん。」
「まだ締め切りまで時間はあるから何とも言えないが…」
「誰かの名前が無い…そういう事ですね?」
「そうだ。高橋と前田そして小嶋…多分アイツ等はこのオーデションに応募して来ないだろう。」
「どうして分かるんですか?」
「なんでかな、わかるんだよ。島田、お前にはまだ無いか?目が覚めてから自分の身体に何か特別な能力が備わった感覚は。もっとも俺もこの数カ月の事だからな。」
「特別な能力…ですか?」
「ああ、俺の場合は直感…だな。なんとなくそうかな?って思う事が大体そうなる。未来…俺にとっては過去だが…に起きる事が分かってるって事と違う意味でだよ。競馬でもそうだ。パドックで馬見てたらなんとなくこいつが勝ちそうだ…って思うとホントに勝つんだ。」
「それでお金稼いでるんですか?」
「いや、まだだ。怖くてな。実際に金を稼ぐ事で歴史が変わってなんかとんでもない事が起こりそうで今まではやめていた。でもな…もう踏ん切りはついた。それにこれから金はいくらあっても足りなくなる。だから…競輪競馬競艇…お構いなしに稼ぎに行くさ。」

特別な力…か。私にも何か身につくのだろうか?
そうだな…誰もが好きになってくれる笑顔とか、どんな人にも感心される言葉とか…
そんなモノが欲しいかな。

「ところで、大場は?あかりんさんは来ないとしても…大場はちょっと脈あると思ったんですけどね。」
「いや…来てないな。大場が来るかどうかは分からん…俺にもわからない事はあるんだ。ピンときた事は大体当るが来ない事はむしろ思い通りにならない事が多い。」
「そうですか…」

たかみなさんがいない…前田さんもこじはるさんも。
前田さんとこじはるさんはあの飛行機に乗っていたはずだ。会いにいくべきなんだろうか?私は初期メンの人には出来れば登場して欲しくなかったっていうのが本音だ。しかし、こうして本当にこの時代の歴史に…AKBに二人がいない…そうなると正直戸惑いを感じる。
でも…島田は思った。前田さんもこじはるさんも本当は目を覚ましてるんじゃないだろうか?そして、あえて来ないんじゃないだろうか?鈴蘭みたいに。もうあんな思いをするのはコリゴリ…そう思ってるのかもしれない。それほどにあの人たちが歩いて来た道のりは険しいものだった…
でも…たかみなさん…たかみなさんは飛行機に乗っていなかった。それなのに…これも歴史が変わるって事なんだろうか?

ぱるる?そして…ワタシ?
二人が初期メンに加わる…それが歴史が変わる第一歩なのか?
それに、こじはるさんの代わりは?麻里子さんはどうなるの?
ただ…戸賀崎さんの言う通りだ。間違いなく歴史は変わり始めている。


さてと…まずは最終オーデションだ。あの人に認めてもらわなくてはならない。



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