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島田と戸賀崎はオフィス近くのフレンチレストランに入った。
閑静な住宅街の中にあるかなり高級そうな佇まいだ。

「戸賀崎さん、こんなトコいいんですか?ランチコース5000円~って…」
「仕方ないだろ。個室あるような気の効いたトコ他には無いからな。ファミレスなんかで向き合って座ってたらどう見ても家出少女と怪しいおっさんにしか見えんだろうし。」
「ですね…今のワタシ、本当に田舎の中学生ですからね。」

「それで…戸賀崎さんはどう思います?今の状況。っていうか、遅かったなってさっき言いましたよね?」
「ああ。丁度1年だな。俺が目を覚ましてから。」
「1年?目を覚ます?」
島田はテーブルに並べられた料理に片っ端から食い付きながら言った。
コース料理だったが、ゆっくり話をしたいからと戸賀崎が一気に全部出してもらったのだ。これなら話の途中で鰯のような目をしたウエイターに邪魔されずに済む。
「ああ、俺が今の時代に戻ったのがな。お前もそうだったんじゃないか?起きたら世界が変わってた…って感覚だったのは。俺は働いてたキャバクラのクソ汚い仮眠室だったけどな。」
「そうです。目を覚ました…確かにそんな感じ。でも、私はほんの数日前でしたけど。」
「どうやらそうらしいな。」
戸賀崎はグラスの水を飲み干した。テーブルに置かれた水差しから自分でグラスに水を注ぐ。
「これって、タイムスリップですよね?」
「その通りだな。タイムスリップにはどうやら2つのパターンがあるらしい。一つはスリップする前の自分の存在がそのまま過去に飛んでくパターン。ドラえもんのタイムマシンなんかはそのタイプだな。10年遡ってみたら10年前の自分がそこにいるっていうな。バック・トゥ・ザ・フューチャーなんかもそうか。」
「私たちは…もう一つのパターンって事ですね?」
「ああ。過去の自分の身体の中に未来の意識だけが乗り移った状態になるパターンだな。」

「ワタシ、考えたんです。戸賀崎さん、最後の記憶って何ですか?2013年の。飛行機に乗った時じゃないですか?あそこがタイムマシン…タイムスリップのきっかけだったんじゃないかって。」
「そうだな。俺もそう思う。そう思って、あの時飛行機に乗ったメンバーの事を調べたさ。それに、目の前に同乗者もいたしな。」
「秋元先生?」
「そうだ。俺はずっと秋元先生の行動をチェックしていた。それとなくタイムスリップの事をにおわした事もある。でも…どうやら先生がまだ目覚めていないみたいだ。」
「なんでわかるんですか?目覚めていないふりをしてるかもしれないじゃないですか?」
島田は前菜のテリーヌからサラダ、スープに舌平目のムニエルを片付けメインの羊肉に取り掛かっていた。皿まで食いそうな勢いだな…戸賀崎は黙って手をつけていない自分が注文した近江牛のローストの皿を島田の方へ差し出した。

「この1年…先生がやってきた事は俺の知ってる2004年から2005年に起きた事と全く同じだった。考えてみろよ。先生が過去の記憶を持ったまま未来からタイプスリップしてきたら、同じ事を二度繰り返すと思うか?」
「まさかあ。それは無いですよね。幾ら大成功を収めたって事が分かってても、絶対に違う事をしますよね。」
「そう。それが秋元康って男だ。」
「でも…戸賀崎さん、1年も前に目覚めてたんでしょ?ここからどうすれば成功するかって分かってるなら自分でやれば良かったじゃないですか?ひょっとしたら2013年に名プロデューサーとして名をはせるのは戸賀崎さんかもしれませんよ?」
島田が羊肉を平らげて戸賀崎から貰った牛肉の皿を目の前に持ってきた。水を一口飲みナイフを入れていく。

「そんなコトやったさ。もちろんな。しかし、俺がどんな企画をどんなトコにもって行っても誰も相手にしてくれなかった。そりゃそうだな。しがないキャバクラの支配人が何を言ったってそこに成功の匂いなんか感じられんだろうし。」
「やっぱり…歴史は変えられないのかなぁ…?」
「島田…お前はどうしたいんだ?歴史を変えたい…そう思ってるんじゃないか?スリップする前の自分を悔いていないのか?だから、俺の前に現れたんじゃないのか?」
「そりゃそうですけど…」
「多分、俺一人じゃダメだが、他に目覚めたヤツがいれば…俺はそう思っている。」
「他に?」
「ああ、さっきも言ったろ?俺は調べたって。あの時飛行機に乗っていたのは、俺と秋元先生。前田と篠田、それに小嶋…」
「私と美奈、鈴蘭…それにSKEのあかりんさん…」
「大人には出来るコトってものがあってな。その時はまだ誰も目覚めてなかった。もちろんお前もな。」
「私の事も?」
「ああ。なかなかいい旅館じゃないか。特に料理が最高だった。」

テーブルの上の料理はすっかり片づいた。島田は更に残ったソースをバゲットで綺麗に拭き取るようにして取った。パンを口に運ぶ。

「戸賀崎さん…デザートも頼みませんか?」
島田がケーキのリストを眺めて言った。
「島田…俺は出来ると思ってるよ。」
「はい?」
「歴史を変えるって事さ。さっき言ったろ?」
「ええ。本当にそう思いますか?」
「ああ。じゃなきゃ、俺たちがこの時代に戻ってきた事の説明がつかない。どうなるかわからん。でも…」
「戸賀崎さん、私は乗りますよ。せっかく新しい命が与えられたんですから。」
「新しい命か…上手い事を言うな。」
「その命の使い道…正しいかどうかは分からないけど…私は自分で決めたいんです。」

島田はまっすぐに戸賀崎の目を見た。
「よし…そうと決まったら…」
「その前に、私はガトーショコラとモンブランとバニラアイスで。」

「まったく、お前は変わらないな…昔も今も。うるせえよ。ホントに。」
「違いますよ。今も未来も…でしょ?」


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Comment

No title

読み始めた時は、グループ内の争いや、絆の話なのかなと思っていたらちょっとSF要素も入ってるんですね!
新鮮で面白いです。
あかりんが選ばれた理由が気になります、、、

2012.05.12 (Sat) | 理奈 #- | URL | Edit

No title

お久しぶりです。
今度はインターネットがつながらなくなってしまいましてこの1ヵ月パソコンとは無縁の生活を送ってました。

これからも頑張って下さい!

2012.05.12 (Sat) | アイヌラックル #- | URL | Edit

No title

そういえば左京さんブログを再開されたようですね。
自分ちょっと安心しました。

あと自分今週末に球技大会があります。
種目は『ソフトボール』です。
この前練習でちょっと打ったのですがまだまだバットコントロールは健在でした。
クラスの友達から『ヤマロー』なんて呼ばれてます。
(自分の名字の山とイチローを掛け合わせたみたいです)

2012.05.13 (Sun) | アイヌラックル #- | URL | Edit

No title

すいません一日の間に三度も投稿してしまって。
『命の使い道』って確かB3rdの公演曲の一つですよね?

2012.05.13 (Sun) | アイヌラックル #- | URL | Edit

もう先が気になってしょうがないですね

久々です
ここまで文を読んでてワクワクするの(笑)

次の更新も楽しみに待っていますね

2012.05.13 (Sun) | レン #- | URL | Edit

No title

>>理奈さん

多分今回は今までとちょっと違う内容になるかも…です。
あかりんが選ばれた理由…
これも結構重要だったりそうでなかったりw

>>アイヌラックルさん

ありがとうございます。
杉上さん再開されたんですね。
後ほど伺ってきます。

ソフトボールかぁ…もう全然打てなくなっちゃったろうなぁ・・って思います。バットすら何年も握ってませんからね。
あと、「命の使い道」はそうですね。B3rdの名曲ですね。おじさんに声でもかけられたら~♪

>>レンさん

お~これは期待に応えれるよう頑張らないといけないですね~
ありがとうございます。

2012.05.14 (Mon) | 四谷 #mQop/nM. | URL | Edit

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