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2012年5月22日 TokyoDomeCity Hall

「それでは最後の挨拶をしましょう。」
見逃した君たちへ2、チームSの「制服の芽」公演のステージ上、汗だくになったメンバーが手をつなぎ横一列になった。
その時、会場の一部で沸き起こったどよめきがやがて大きな歓声へと変わっていった。
きょとんとした表情を見せるメンバー達。劇場支配人の湯浅洋が現れた。

「え~こんばんは。ここで突然ですが皆さんにお知らせがあります。」
サプライズだ。噂されていた新公演の発表か?観客は色めき立った。
「かねてより、ご心配をおかけしておりました松井珠理奈のAKB48チームKの兼任の件ですが、いよいよその詳細が決定しましたのでご報告します。」
湯浅がそこまで話すと舞台後ろからタキシード姿の戸賀崎智信が現れた。
「まず、現在展開しております全国ツアーに新メンバーとして参加します。更に秋に予定されている新公演初日より秋葉原の劇場公演に出演、さらには…」
戸賀崎の口から珠理奈の兼任による今後のスケジュールが発表されていく。会場が騒然となり始めた。やがて罵声が飛び始め次第にその声は一つの塊となって大きなブーイングへと変わっていった。
「引っ込め!戸賀崎!」
「珠理奈は渡さないぞ!」
「話が違うぞ!それじゃ兼任なんかじゃない!やっぱり移籍なんじゃないか!」
「湯浅、何勝手な事言わせてんだよ!」

徐々にこわばっていく珠理奈の表情を大矢真那が心配そうな表情で見つめていた。
隣に立っている松井玲奈に寄りかかるようにしている。
珠理奈は立っているのがやっとにも見えた。

--------<<開演前>>----------------

「珠理奈。どうしたの?その髪」
「あ…見つかっちゃった…うん、ちょっとね。」
「ちょっとねって…」
大矢が珠理奈の髪を覗き込む。後頭部大きな脱毛による禿が見える。
円形脱毛症だ。

「最近ずっとエクステつけてると思ったら…いつから?」
「うん…」
「うんじゃなくてさ…」

珠理奈の眼に涙が溢れてきた。黙ってそのまま大矢の胸に顔を埋める。
電撃的なチームKとの兼任発表後に倒れ入院を余儀なくされた珠理奈。
復帰してきてから、前と同じように明るく笑う姿の裏には想像を絶するストレスがあったに違いない。
「お願い…みんなには黙ってて…」
そう言って肩を震わせる珠理奈の頭をそっと撫でながら、大矢は優しくその身体を抱き続けた。


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場内の雰囲気は最悪だった。
楽しかった公演の余韻は跡かたもない。最後の最後できっと発表される…そう信じて待ったファンもチームSの新公演が発表される事無く戸賀崎と湯浅が退場しようとした所で不満を爆発させた。係員の制止を振りはらってステージに駆け寄ろうとする者もいた。


どうしてなの?
どこまで大人たちは私達の事を弄ぶかのように扱うの?
今までガマンしてきた。どんな不条理な事でもきっと何か私達の為になる事があるに違いない。
そう思って来た。でも、ダメだ・・今度だけは理解できない。
これ以上珠理奈の苦しむ姿は見たくない…いや、苦しめるなんて私がさせない…

「ちょ…ちょっと…」
何かを言いかけた玲奈を制して大矢が声を上げた。

「ちょっと待ってください!私からもお話があります。ファンの皆さん、お願いします。聞いてください!」
突然ファンに大矢が呼びかけた。戸賀崎も湯浅も思わず足を止め振り返る。
「お願いします!私の話を聞いてください!」
タダごとじゃない…真那が何か言おうとしている。表情をこわばらせ涙を目にいっぱいに溜めた大矢の姿がスクリーンに映し出されると会場は徐々に静寂を取り戻していった。

大矢は大きく深呼吸するようにため息をついた。そっと目を閉じ、マイクを両手で持ち話始める。

「戸賀崎さん、湯浅さん…そして…いらっしゃってますよね?秋元先生。」
大矢が2階バルコニー席の一角に視線を送り言葉を放った。会場がざわめく。
「先生は、珠理奈がチームKさんから…何かを持ち帰る事で化学反応がおきる…そうおっしゃっていました。でも、珠理奈はもう何年もAKBさんの選抜メンバーとしてその役割を果たしてきました。ご存じの通り、今、珠理奈はその幼い身体で必死に先生の期待にこたえようとしています。でも…でも、珠理奈はまだ高校生になったばかりです。今は…今は他に大事な事があるんじゃないでしょうか。」

「そうだ!真那の言う通りだ!」
「真那!良く言った!」
会場から次々に声がかかる。

「もし…先生がおっしゃるように今のSKEにチームKから何かを持って帰る必要があるなら…その役を…」
大矢がまた大きく深呼吸をする。頬には大粒の涙が流れ始めた。声が震える。
それでも、絞りだすように次の言葉を続けた。
「その役割…大矢真那にやらせてください!今、この場で立候補します!」

会場から悲鳴のような声が上がった。
ファン同士顔を見合わせる者もいた。

「こんな事言って…何言ってるんだ…って言われるファンの方もおると思います。お前はSKEを捨てるのかって…お前がAKBに行きたいだけじゃないかって言われるかもしれません…でも…今は、何と言われても。私が何と言われても構いません。ただ…珠理奈には、SKEに残って欲しいんです。お願いします。どうか、私のわがままを許してください。そして…秋元先生。私じゃ力不足かもしれません。でも・・頑張りますから!どうかお願いします!」

多くのファンは大矢の言葉の意味を理解していた。真那が決して自分の売名の為にこんな事を言い出したのではないという事も。頭を深々と下げる大矢に温かい声援と拍手が送られた。

「やすす…!やすす!」
会場の一角から起こったやすすコールが次第に会場を包み始めた。
「おい。何をしてるんだ。照明をつけるんだ。閉幕のアナウンスを流すんだよ。大矢、お前も馬鹿なことを言ってないで…」
慌てて湯浅がスタッフに支持を飛ばしている。戸ヶ崎は苦虫をかみつぶしたような表情になっている。

「マイクを…いいかな?」
黒いジャケット姿の男がステージに現れるとそう言った。

4 | Home | 鍵コメでご質問をいただきましたので…

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