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inning93.




10年後…


「いいですか、総理。緊縮財政に反対してるのではありません。事実、私は官僚時代、文科省の無駄を徹底して排除するよう動いてきました。だからこそ出世を阻まれ、政界に転身したのですが…しかし…スポーツ推進の予算を闇雲に削る事は賛同出来ません。いいですか?子供たちは野球選手やサッカー選手に憧れ、その姿を夢見るのです。今、私達日本人にとって一番大事な事は、目先の事だけでなく、この国を背負って立つ子供たちの夢を手助けする環境を作る事です。私達が元気になる・・この国がもう一度元気を出すには彼らの夢を死なせるわけにはいかないのです。」

衆議院予算委員会。一人の若手議員が質問に立っていた。
議長が眠そうな声を発する。
「内閣総理大臣、秋元康君。」

「仲俣先生。相変わらずですね…まるで野党の方に質問されているような鋭さだ・・ご指摘の通り、私は真の経済復興に一番大事な事はこの国の元気だと思っております。先生のおっしゃる通り、子供たちの夢をはぐくむ事こそ、今私達が果たさなくてはならない義務だと実感しております。野党の方にも、その事を十分ご理解頂き予算成立にご協力いただきたい。もちろん、これまで通り、各省庁への無駄の削減を徹底して参ります。」


「総理、お疲れ様です。」
「おお、仲俣、君も今日は行くんだろ?」
「ええ、ご一緒します。なんといっても世紀の一戦ですからね。」
「東京ドームも久しぶりだな。総理という仕事は忙しいのが難点だ。」
「でも、支持率は相変わらず高いじゃないですか。景況指数も株価も徐々に回復基調だし。総理の大改革が評価されてるって事でしょう?」
「政治の世界も…なかなかに面白いものだからね。」

WBC・・・ワールド・ベースボール・クラッシック。存在の意義が問われたその大会は、大きく変貌を遂げていた。国別対抗として新設されたワールドカップがいま一つ盛り上がらない中、日本・韓国・台湾・そしてアメリカ…それぞれのチャンピオンチームが世界No.1を争うこの大会はメジャーが本腰を上げた事で文字通り世界最高峰の戦いの場となっていた。
決勝に進んだのは、日本のチャンピオンチームの阪神タイガース、そしてメジャーの代表・ニューヨークヤンキースだった。大会創設以来、全ての大会でメジャーリーグが優勝を飾っている。この大会で勝つことが日本球界の大きな悲願だった。

3勝3敗で迎えた最終戦、タイガースの先発・篠田麻里子は素晴らしいピッチングを展開していた。キャッチャーの仁藤萌乃のサイン通りに際どいボールがコーナーいっぱいに決まっていく。一方、ヤンキースは先発投手の乱調から序盤から苦しい展開を強いられていた。タイガースの4番・鈴木紫帆里にも特大の先制ホームランが出た。しかし、ヤンキースの3番手で登場した菊地あやかの好投が流れを変えた。3番を打つ柏木由紀が7回に放ったスリーランで1点差に詰め寄った。

「さあ、大詰めを迎えたWBC最終戦。ヤンキース最後の最後で粘りを見せます。ツーアウトながら2塁3塁にランナーを置くチャンス。打順は3番の柏木に周ります。先ほどの打席では篠田から完璧なホームランをレフトスタンド上段に運んでいます。おっと…タイガースベンチから金本監督が出てきましたね…ピッチャーの交代でしょうか?」

「タイガース、選手の交代をお知らせいたします。ピッチャー、篠田に代わりまして宮崎。ピッチャー宮崎美穂。背番号38。」

「宮崎です。やはり、金本監督、最後は今シーズン押さえのエースとして活躍した宮崎をマウンドに送ります。昨日4イニングを投げ今日の当番はないかと思われていた宮崎ですが、ここはやはり出てきました。」

投球練習を終えた宮崎に仁藤が駆け寄る。
「まいったね。あのときとまったく同じだ。」
「そうだね。ホント。運命って事かな?」
「なんか、懐かしいね。昨日の事みたい。」
「さ…いこっか。」
仁藤がマスクを被ってポジションに戻った。

「さすがにここは敬遠でしょ?」
「さぁ…どうかな?」
「萌乃、嘘つくの下手だね~相変わらず。いいのかな?今度は打つよ。あの時のリベンジ…いつかきっと…って思ってたんだ。」
「そうはいかないよ…今度も勝つのは…私達だ。」

仁藤が軽くミットを一つ叩いた。

あとがき | Home | inning92.

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