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inning47.



「ダメだって。みゃお、何度も言ったでしょ?そんな苦しいってトコまで追いこんじゃダメ。心拍計見てる?MAXまで上げても145までだよ。そこまで上がったら走るのやめて歩きに切り替えなきゃ。」
「でもさぁ、なかまったー、なんか私だけ楽してるみたいじゃん?みんなひぃひぃ言いながらダッシュしてるのに。」

塁間ダッシュを延々と繰り返すメンバーから一人離れてジョグを続ける宮崎を、仲俣が諭すようになだめる。菊地も仁藤も…あれだけインターバルトレーニングを嫌っていた小森も泣きごと一つ言わずに黙々とダッシュを繰り返してる。九州とはいえ、北部九州の冬は厳しい。凍てつくような気温と北風の中メンバーはみな半袖姿だ。それでも全員の顔からは滝のような汗が流れ落ちていた。

そんな中、宮崎には個別に別メニューが組まれていた。故障を抱えているわけではない。井上が目論んだ減量と柔軟性を高める為のメニューだ。
「あのね。何もアンタに楽させようってしてるわけじゃないのよ。それはわかってるでしょ?みやおは筋肉量は人並み以上なんだから、効率よく体重を減らすには体脂肪を燃やす事。その為には心拍数をコントロールしてトレーニングするのが一番なんだから。あと、嫌いでもストレッチはみっちりやるからね。」
「ひぃぇ~…そっちのほうが怖いわ…」
宮崎は肩をすくめてジョギングへ戻った。

秋以来、投球練習は全くしていない。ピッチャーから離れる期間が長くなるほど、菊地の凄さが身にしみてわかる。球速、ボールのキレ、多彩な変化球、コントロール。普段は馬鹿ばっか言ってる天然キャラなのにマウンドの上では実にクレバーで冷静だ。どこをどうとっても自分が敵う要素は何もないように思えた。それでも宮崎は文句の一つを言う事なく与えられたメニューを黙々とこなしていた。野球が出来ずに…いや、自ら野球から距離を置いたあの時期の悶々とした思いで過ごすよりも全然気持ちはすっきりしている。

千城高校の冬の練習は、その量においては他校を圧倒していた。部員が少ない分一人当たり乃練習量は増える。冬とはいえ、千城はボールを握りバットを振った。もちろん、基礎体力の向上の為のトレーニングは行った上でだ。悴む手でボールを打つ。カイロで温めながらだが、手のひらは痺れ指先はアカギレでジンジンと痛む。一日の最後にはフラフラになった身体で素振を繰り返す。一見、しごきにも思えるハードな練習にももちろん意味があった。極限まで疲労した身体でバットスイングをすると一番楽なスイングをするようになる。素振りにするのは、そこで余計な力を入れないためだ。目をつぶってスイングする事で、その一番な楽なフォームを身体に沁みつかせる。そんな狙いがあった。

春先を迎える頃には、メンバーの身体は一回り大きくなっていた。もちろん、余計なぜい肉ではなく鍛えられた身体とい意味でだ。そして、同時に宮崎の身体も十分にシェイプされた。井上から投球練習の解禁が言い渡されたのは、センバツの歓声が甲子園に響く3月になってからであった。

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