スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

inning41.



博大大濠の先発、若田部は甲子園の疲れからか本来の調子ではないように見えた。それでも、初回の千城高校の攻撃を何とかゼロに抑えた。観客からは千城打線の鋭いスイングに驚きの声が上がっていた。特に3番仁藤のセンター前に弾き返した打球と4番鈴木のあわやホームランという大きなファウルにはどよめきすら起こった程だ。

代わって菊地がマウンドに上がった。投球練習をしながら弾けるような笑顔を見せる。
「なんや、アイツ、へらへらしちょるのぅ。」
「ウチら相手に投げる事が嬉しかとよ。ま、すぐに笑えんようになると。」
1番を打つ古森と穴井がネクストバッターサークルの辺りで話あっている。甲子園でも1・2番を打ったコンビだ。

「バッターラップ!!」
審判の声がかかった。古森が打席に入る。

さて…と。記念すべき初球だ。思いっきり真っ直ぐど真ん中でいこうか?
え…?首振るの?マジ?変化球から?あやりんらしくないなぁ。慎重になってるの?ま、いいか。じゃ、スライダー?ん…これも違う?まさか、初球から落とすとか?違う…もう、何投げたいんだよ。ったく、そんなニコニコしちゃって。いいや、好きに投げな。ノーサインでいいから。何が来てもちゃんと止めてやるからさ。

ようやくサインが決まった。笑顔のまま菊地が大きくワインドアップする。
菊地の投じた初球は大きく緩やかな弧を描いた。打者の古森が見上げる程のスローボールだ。そのまま茫然と見送った。

「ストライク。」
審判のコールを聞き終え、古森が仁藤に小声で話しかける。
「おい…舐めとうと?そげな余裕かましよる立場やなかとや?」
「舐めてなんかいませんよ。緩急ですよ。」
仁藤が古森に笑いかける。お、さすがは全国有数のトップバッター。冷静だねぇ…
「緩急?面白か。じゃあ、次は速い球見せてくれるとね?」
「ええ。多分。」

菊地がすぐに次の投球フォームに入る。
「わかりやすか~。顔がマジになったばい。力入れて投げますって言っとうようなもんたい。」
古森のバットを握る手が強くなった。狙ってやる…

菊地の渾身のストレートが仁藤のミットに収まった。古森はバットを振るどころか、反応する事も出来ずただそのボールを見送った。大濠ベンチも観客席も一瞬言葉を失った。菊地のストレートはそれだけの威力だった。
目を見張ったのは相手の大濠サイドだけではなかった。ボールを受けた仁藤も、ベンチの井上も守ってる千城ナインも同じだ。違う…これまで練習で見せていた球とはモノが違う。スピードもキレも威力も…ケタが違う。これが…菊地あやかの本気なのか?

inning42. | Home | inning40.

Comment

Post comment

Secret

Page top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。