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inning37.



「あーあ…決まっちゃったね。11-2かぁ。こんな大差つくとはね…」
視聴覚室のテレビを見ながら石田が呟いた。
「いや…栄京って強いよ…それに、レギュラーで3年生って桑原一人でしょ?殆どそのまま来年もってなると…こりゃ、秋葉時代から栄京時代に変わっちゃうかも。」
「でもなあ、難波桐蔭だって2年生ばっかだよ?1番打ってる城なんてまだ1年だし。」
鈴木と仁藤が言う。出場校が特集された雑誌のページを繰りながらテレビに映る選手をチェックしている。今年は圧倒的に2年生の逸材が多い。

「でもさぁ。博多大大濠が決勝まで行くとはね…おかげで、私たちとの試合日程がなかなか決まらないしさ。」
宮崎が頬を膨らませる。仲川がその頬を指で突こうとして宮崎に払い のけられ無邪気な笑顔を見せた。その笑顔のままで明るい声を上げる。
「でも…その方がウチとしてはいいんだけどね~。甲子園優勝か準優勝…そんなガッコの新チーム第一戦がウチとだ…なんて、スゴイよね~。」
「それに…っていうか、それよりも問題なのは…まだウチが試合の準備が出来てないってことでしょ。萌乃…みちゃとなかまったーは相変わらず?」

宮崎の言う通り、夏休みの練習が続く中、相変わらず千城高校の野球部は8名のままだった。仁藤は同じように秋葉学院から転校してきた野中と仲俣を熱心に勧誘していたのだが、二人からの前向きな返事は聞けないままでいた。また、その練習内容のハードさから、一般の生徒からも入部してみよう…そんな風に言う者も出てこなかった。
「みちゃもなかまったーもA組だもんね…」
「A組に秋葉からの転校生なんていたんだ?だって、アソコは…」
菊地が意外そうな声を上げた。A組とは各学年に1クラスだけ設定された進学特進クラスの事だ。地方私立で特にスポーツに特化してるわけでもなく、平均的な進学率が周りの公立校よりも低い千城高校が唯一存在価値を高めているのがこの特進クラスで、クラス全員がほぼ現役で旧帝大に進学し、昨年は東大に28名の合格者を輩出した。これは県内トップの数字だ。

「ねえ…みちゃって…野中さんっていったっけ?なんか、ほわ~んとした感じの子じゃない?髪型がボブっていうかちょっと短めの」
「あれ?あやりん、知ってるの?」
仁藤が菊地の方に顔を向ける。菊地はテレビの画面を見ながら頷いた。試合終了のサイレンが響いてくる。明日の決勝が栄京大栄京と博多大大濠に決まった。
「う~ん…声かけた事ある。何度か廊下の窓から練習をず~っと見てたから、興味ある?って。まさか、秋葉からの転校生とは思わなかった。雰囲気が上品だし。」
「ちょっと、それじゃ私たちが下品って言われてる気がするんだけど?それに、あやりん、れなんで練習中のウチらをあやりんが廊下から見てたのかなぁ?サボり?」
石田が菊地の背中に腕を回して笑う。
「あ、違うよぉ。ほら…夏休みの補習あったじゃない…?私、成績悪いから。多分、その子は夏季特別受講で登校してたんだろうけど。話かけた時受講票で名前チェックしたんだ。」

「さ、練習行こうか。人数集めは人数集め。練習は練習。」
仁藤が立ち上がった。

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