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inning32.


「ちぃ~っすぅ」
「おお、来た来た。やっぱねぇ~」
「っていうか、何で揃いも揃ってこんなトコいるかなぁ?ヒマ人ばっか。」
制服姿の大島優子が部室に入ってきた。前田敦子、秋元才加、高橋みなみ…だけではない。片山、増田、小林…3年生部員の大部分がそこにいた。
「ワタシは違うよ。みんなと違って忙しいんだ。今日だって…あ、そうそう忘れ物取りにきたんだよ。忘れ物。」
「ふぅ~ん…優子のロッカー、綺麗なモンだけどねぇ。」
前田が意地悪そうな笑顔を浮かべる。大島もバツの悪そうな笑顔でそれに応える。
「はぁ…参ったね。まだこんなに明るいよ。ねぇ、どっか行かない?」
「いいねぇ。ドコ行く?]
高橋が馬乗りになっていた椅子から身を乗り出して言う。
「ドコって…う~ん…カラオケとか?」
片山がさして乗り気でない声で言う。
「そうねぇ。カラオケもいいけど…」

キィン!!!
グラウンドから甲高い金属音が響いてきた。
集まったメンバーの会話が途切れた。

「なんか…つまんないね…」
「何言ってるの、香菜。あんだけヤダヤダ言ってたじゃん、練習。引退したら遊ぶぞ~っていつも煩いくらい言ってたのに。」
「そうだよね。もう練習行かなくていいんだよね…」
小林の目に涙が浮かんできた。
「もう、何だよ。泣くだけ泣いてすっきりしたろ?これから楽しい夏休みじゃん。プールだって海だって行けるし。」
高橋が小林を励ますように笑って言う。
「その日焼け痕で?二の腕から先と首から上だけ日焼けしてて…可愛くないよ?」
部室に入ってきた小嶋陽菜が高橋をからかった。部室内に再び笑いあ起きる。

その時、バタバタと慌てた様子で柏木由紀が入ってきた。練習が始まっているというのに制服姿のままだ。

「あ…先輩。こんにちは。」
「ゆきりん、どした?練習始まってるよ?」
「すみません…ちょっと。」
「ほら、挨拶はいいから早く着替えな。」
高橋が柏木に目を細めて言った。注意すると言う感じではない。
「あの…キャプテン…」
「ん?って、ワタシはもうキャプテンじゃないよ。今はゆきりんがキャプテンでしょ?」
「あ…すみません。何かまだ慣れなくて…」
「おいおい、しっかりしろよな。で、どした?」
「えっと…えっと…すみません。何でもありません。じゃ、失礼します。」
手早く着替えを済ました柏木が部室から慌ただしく出て行った。
高橋と大島が顔を見合わせて肩をすくめる。
「ありゃ…そうとう悩んでるな。」
「そうだね…キャプテンに指名された時の、あのまん丸の目が忘れられないよ。あん時もたかみなに怒られてたよな。ゆきりんしかいないのにね。新キャプテンは。」
「何でも、守備もバッティングもぼろぼろらしいよ。」
前田が部室の窓からグラウンドを見下ろしながら言った。
「あ~やっぱ、カラオケ行こうよ。なんか、ここにいても野球の話ばっか。」
小林が背伸びして叫ぶように言った。
「そうだね。そうしよっか。」
高橋が椅子から腰を上げた。
「あの子達が自分で乗り越えていかなくちゃいけないんだよ。私たちがしてきたみたいにね。」
「ん~?たかみなって何か壁ぶつかってたっけ?」
「もーあっちゃんに言われたくないなぁ。」
「っていうか、カラオケって何歌うの?最近の曲知らないよ、ワタシ。」
「たかみなは持ち歌あるじゃん。なんだっけ?あのAKBぃ~ってかけ声から始まる歌。」
3年生部員達がガヤガヤと部室を去って行った。

グラウンドへ向かう通路の脇でその後ろ姿を暫く迷ったように見送った柏木が首を振ってグラウンドに走って行った。

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