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inning23.



「ねえ…道重…って子。今日の向こうの先発ピッチャーの子って聞いた事ある?」
大島優子と宮澤佐江が相手ベンチの前のブルペンでピッティング練習を続ける、朝夢高校の道重さゆみを見ながら柏木由紀に聞いた。
「いえ…予選、ここまで1試合も投げてませんね。っていうか、公式戦での登板すらありません。練習試合での登板も私が集めたデータでは3試合の登板だけです。まだ1年生ですからね。」
ゆきりんメモと呼ばれる使いこまれたノートを見ながら柏木が答える。

チームの司令塔、秋葉の頭脳と言われる柏木のコンピュータにもインプットされていない選手をこの大事な決勝で使ってくるとは…ベンチの中で監督の戸賀崎は腕を組んで考え込んでいた。まあ、古豪とはいえ、朝夢の寺田監督も奇策を打ってくるしかなかったのだろう…ウチは誰が来ようとウチの野球をするだけさ。
しかし…さっきから見てるが…大丈夫か?あの道重って子。確かに球は速いが…まったくストライクが入っとらんぞ?1年生だと?そりゃ、いきなりこの大舞台じゃ緊張でまともにマウンドの上に立てないんじゃないか?

戸賀崎が見た通り、相手投手の道重は立ち上がりから大荒れに荒れた。
先頭の前田への初球はキャッチャーがミットに触る事も出来ずバックネットを直撃したし、その後のボールも明らかにボールとわかる球でストレートの四球を与えた。続く高橋も一応はバントの構えをしていたがこれも明らかにボールとわかる球が4つ続いた。3番の大島の3球目にようやくストライクが入ったものの、次の4球目は大島の脇腹を直撃した。

ノーアウト満塁。4番の柏木が打席に入った。

しかし…この子が決勝の先発に立たなきゃいけないっていうのが今の朝夢なんだな…柏木は秋葉に入学する前、朝夢のセレクション受験に参加して落ちた経験がある。古豪朝夢でプレーする事は叶わなかったが、人生は不思議なものである。名門秋葉学院に合格し、入学後めきめき力を伸ばし2年生で司令塔と4番の座を勝ち取るのだから。

道重がマウンドの上で肩をすくめる仕草をした。さすがに3つの四死球を連発したんだ、幾らなんでもストライク取りにくるでしょ?柏木の読み通り、初球はややスピードを殺したストレートが甘いコースに入ってきた。柏木は迷う事なくバットを振りぬいた。

「打ったぁ!!!これは…文句無しだ!!!レフトも…センターも…追わない。見上げるだけだ。その頭上を遥かに…スタンド上段まで行ったぁ!!!4番柏木のバット一閃。満塁ホームラン!!!秋葉学園、甲子園春夏連覇に向け、早くも初回4点を先制しました!!!」
アナウンサーの絶叫が響く。

こりゃ、試合にならないぞ…
観客席から早くもそんな声が聞こえ始めた。

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