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inning20.



菊地と仁藤がキャッチボールをしてるのを見ながら、石田が宮崎の耳元で囁いた。
「ちょっとはまともに投げれそうじゃない?綺麗な回転のボールだよ。」
「マウンドに立ってみないとわからないよ。」
宮崎がバッティンググローブを付けヘルメットを被る。ピッチャーが本職だった宮崎だがバッティングにも定評がある。中学の時は4番を打っていた。

「じゃあ、各自1打席勝負な。全員を菊地が押さえたら俺の勝ち。一人でもヒットを打ったらお前達の勝ちだ。」
「ホントにそんな条件でいいんですか?私たちが勝ったら全員で『葡萄の木』でTボーンステーキですよ?一人1万円コースですけど?」
「ああ。構わないさ。その代わり俺が勝ったら…」
「はいはい。何でも言う事聞きますよ。まあ、夏休みの暇潰しにつきあってもいいけどね。でも…悪いけど打ちますよ。」

「先生、もういいですよ。準備OKです。」
菊地が声をかけた。仁藤もマスクをつけホームベースの後ろに座っている。
「じゃあ、私からね。美味しいトコは真っ先に頂く性分なんだ。」
「お、石田からか。リードオフマン候補だったんだもんな。」
「ちっ…思い出したくないコト言わないでよね。」
石田が右のバッターボックスに入る。2度3度と素振りをしてからバットを立てて構えた。小さな身体でバットを目いっぱい長く持っている。

目つきが変わったな…さすがだな。まだ闘争本能ってのは消えてないみたいだ。多分、もう賭けの事なんか頭から消えてるんだろ?それでいい。それでこそ、石田晴香だよ。

菊地が大きなモーションから1球目を投じた。
恐らく結構速い球が来るんだろうね。じゃなきゃ、仮にも元プロ選手の先生がこんな賭けを持ちかけてくるはずがない。悪いね、先生。油断してたら打てないレベルの球が来る…そう思ってるだけでいい。まさか、本当のプロの球じゃあるまいし。ヒット打つくらいなら難しい話じゃないさ。
菊地のストレートに石田が思い切り踏み込んで行った。タイミングを合わせてバットを出す…つもりだった。いや、油断はしてない。むしろ、秋葉の控え投手レベルの球を想像してた。そうだな…あきちゃくらいかな。
しかし、石田のスイングは途中で止まった。いや、止められた。菊地のストレートは石田の想像を遥かに超える威力で仁藤のミットに収まっていた。

「先生も人が悪いなぁ…こんな美味しい球、こんなイナカでお目にかかれるって思ってませんでしたよ。」
石田がボックスを外してバットを持ち直した。拳一つ分短く握っている。
「ほう。謙虚だな。」
「これがホントの私のスタイルなんで。ヒットでいいんでしょ?」
菊地の2球目はインサイドいっぱいにコントロールされたストレートだった。思わず石田が腰を引いて見送る。
「ストライクだぞ、石田。」
「わかってるよ。もうわかった。次は仕留めるよ。」
菊地が振りかぶって3球目を投げた。
「ひっ…!!危ねぇ!!!!」
顔面に向かってきたボールに思わず石田が顔を背けた。ミットの音が響く。
「見逃し三振だな。石田、終わりだ。」
「ちょ…今のがストライクだって?そりゃないで…」
「はるきゃん、ストライクだよ。余裕で。」
鈴木がバットを持って石田の肩を叩いた。
「カーブだよ。大きな縦のカーブ。今どきあんなキレのあるカーブ投げるピッチャーがいたんだね。さ、次は私の番だよ。」
「ちょ…カーブあるならあるって言ってくれないと…」
「石田、どの世界にこれからカーブ投げますって教えて投げるピッチャーがいるんだ?それに、トップバッターがたかがカーブでひっくり返されといて情けねぇと思わないか?言ったろ、これは賭けだって。賭けって事は勝負って事だ。そんな甘くねえよ。」


長距離打者として期待されていた鈴木も、かつては一度ひとケタの背番号をつけレギュラーの4番を打った事がある内田も、曲者と言われしぶといバッティングをする仲川も、一発長打の小森も…誰も菊地のボールに触れる事さえできなかった。
最後の宮崎も2球で2ストライクと追い込まれていた。
「ラスト…ストレートだ。菊地、まっすぐで勝負しろ。」
「はい…わかりました。」
菊地の細い腕がムチのようにしなる。投げ込まれたストレートはド真ん中に入ってきた。宮崎は茫然とその球を見送った。


「先生。私たちの負けだわ。何でも言う事聞きましょ。」
「みゃお…アンタ。」
石田が宮崎の横に歩み寄った。
「はるきゃん、しほりん、うっちー…なんか、もう飽きちゃった。やんなっちゃった。言い訳ばっかしてるのが。私、やっぱ野球が好きだわ。こんな風に、手強いライバルと戦う事が堪んなく好き。」

「宮崎さん…石田さん…」
マウンドから菊地がゆっくりバッターボックスの方へと歩いてきた。
「みゃおと、はるきゃん…でいいよね?」
仁藤がマスクを外し笑った。

「よし!!お前ら。メシ食いに行くか。」
「え?葡萄の木?ステーキ?」
「バカ野郎。賭けに勝ったのは俺だ。そんな市内で一番高い店行くかよ。ガストだよガスト。」
「なんだぁ。」
久しぶりにグラウンドに大きな笑い声が響いた。

おはようございます | Home | ining19.

Comment

いつも楽しく読ませてもらっています。質問なんですが、時差は何時間なんですか?今日のMステにぱるるが出ていてめっちゃ可愛かった。最近、音楽番組にぱるるよく出てきます。
話の内容に移らしてもらいますが、みいちゃんが怪我をしてしまうなんて。たかみなも相当悔しいと思います。干されの人達の戦いでヨシマサが勝つなんて。だけど、あやりんのおかげですけどね。それを見抜くヨシマサもすごいです。同時進行に進んでいて干されの人たちが悲しいです。ヨシマサのことをどう呼ぶか迷いました。あーみんも干され高校の方が似合っているかなぁ。四谷さんはどちらだと思いますか?楽しみにしています。

2012.02.17 (Fri) | なたや #LkZag.iM | URL | Edit

自分がよく知っているスポーツだけに
いつも以上に状況がイメージしやすくて楽しいです

2012.02.17 (Fri) | レン #- | URL | Edit

いよいよ戦いが始まりますか

もう干されなんて言わせない、メンバーのそんな感じが伝わってきて高まってます。 ところで心配が幾つか、今年の地区予選エントリーって間に合うんですよね?それと未だ部員9人なのですが誰か加わるんですよね。私としては夢を無理に諦めようとしている秋英の3年生にもチャンスの順番をと期待しているのですが…。お仕事大変と思いますが更新を日々楽しみにしています

2012.02.17 (Fri) | HARUKA #- | URL | Edit

更新お疲れ様です
いやぁ~面白くてグイグイ引き込まれてしまいます。
ここからどのようなドラマが展開されていくのか楽しみです。
四谷さんは高校野球の強豪校でプレーされていたというお話をされていましたが、どこの地区だったのでしょうか?
差し支えなければ教えて頂きたいです。

2012.02.18 (Sat) | カトゥーン #- | URL | Edit

>>なたやさん

ぱるるはマジ可愛いですね。でも、今日衝撃の事実が…
詳しくはさっき書きました。

時差は-17時間ですね。なので、帰ったらまた時差ボケかなぁ…

えっと、そろそろ話が進んできたので、ここでの種明かしはちょっと待ってくださいね。
まだ色々考えてる事もあるので(笑)



>>レンさん

野球は親しんでる方が多いので、余計描写に神経を使います。
これからもがんばりますね。



>>HARUKAさん

地区エントリーとか部員数とか…
すみません。話が進んできたので、種明かし的なお返事はちょっと待ってくださいね。
早くばらしたくて…おっと、いかんいかん(笑)



>>カトゥーンさん


私は高校までは九州の学校でした。ホサレ校ではありませんが(笑)大学は一応六大学と呼ばれる学校の一つに進みました。
同級生にも結構プロに進んだ選手もいますが、私はもちろんそうではありません。
あ、当たり前か(笑)

2012.02.18 (Sat) | 四谷 #shG0gkhA | URL | Edit

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