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inning6.



「片山…お前には今日から1年生を見てもらいたい。」
アップの途中で呼び出された片山陽加は監督の戸賀崎智信にそう告げられていた。ベンチ入り候補の40名には選ばれていたが事実上の戦力外通告だ。3年生になって初めて回ってきたチャンスだった。片山は唇を噛みしめた。
「お前のここまでの頑張りには頭が下がる。本当に地道に良く頑張ってくれた。しかし…わかってくれ。ウチは来年以降も秋葉学院であり続けなくてはいけない。高橋、前田、大島、才加、板野、小嶋、宮澤…あいつ等が抜けた来年以降のチームの為に、お前の力を…」
「わかりました。」
片山はそう言って戸賀崎ににこっと笑ってみせた。

わかってる。レギュラーポジションはほぼ固まってる。今当落線上にあるのは、レギュラーに何かあった時や調子が悪い時に控えに入れる選手たちだ。私だって、いつでも彼女たちの代わりになる準備はしてきたし、与えられたポジションをこなす自信だってある。しかし…私は3年生だ。その経験が来年以降に活かされる事はない。ただの思い出にしかならない。

レギュラーを選ぶ場合、同じ力量を持った3年生と2年生がいたら選ばれるのは3年生だ。年功序列って意味じゃない。土壇場の勝負所…1点差で負けてる9回裏ツーアウト満塁。そこで逆点打を打つ為に必要なのは技術なんかじゃない。逆に同じ場面を1点リードで迎えたとする。そこに難しいバウンドのゴロが飛んできた。それを捌いて一塁に正確に送球する。それをする為に必要なのも技術なんかじゃない。経験だ。どれだけバットを振り、どれだけのノックを受けてきたか。その積み重ねが問われるのだ。だから、同じ力量ならレギュラーは3年生がいい。選りすぐられた精鋭達が質・量ともに桁外れの練習に励む秋葉学院伝統の考え方だ。

しかし…明らかに実力が上なら、学年関係無しに起用されるのがこれも名門校の宿命でもある。精神力はもちろん必要だ。しかし、それをも凌駕する力をもった選手が全国から集まってきている…それが秋葉学院だ。

「では、練習に戻らせて頂きます。」
片山は部室に戻り、練習用の真っ白なユニフォームの上着を脱いだ。紺のTシャツ姿になってストレッチを続けるチームメイトの輪の中に戻って行った。
「はーちゃん…」
副将の秋元才加が近寄ってきて声をかける。片山は無言で頷いた。
「1年シャツ組、集まって~!マシンセットとゲージ設置始めるよ!」
片山の大きな声に、1年生部員が集まってきた。40名の候補に入ってない部員は1年生だけでも70名以上いる。片山はテキパキと指示を与えていった。

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