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72.



大島がその場に立ち止まった。観衆からどよめきが上がる。10秒…20秒…30秒…ようやくサポートカーがやってきた。ランスから差し出されたボトルを受け取る。
「とりあえず2つ。お願いします。ともちんとみいちゃんには、後で渡してください。」そう言って大島がリスタートした。フルアタックをかけるようなペースで前を追う。ふと気配を感じ振り返るとそこに矢神久美の姿があった。
「追いついてきたのか…やるね…」

残ってるのは須田と矢神の二人だけだった。栄も最後の賭けに打って出ていた。一人ひとりが燃料を燃やし尽くして切り離されるロケットのエンジンのように死力を尽くして須田を守ってきたのだ。最後の矢神の燃料もまさにつき果てようとしていたところだ。
「ゴメン…最後まで牽けなかった。最後一人にさせちゃうね…」
矢神が苦しそうに下がって行く。
「大丈夫です。私、一人じゃないですから。みんなが背中押してくれてますから。」
須田が矢神に声をかけ前を向いた。大島の後ろに張り付く。

「おいおい…そう来るか…参ったなぁ。」
仲谷と須田の差は2分半だ。このまま私がボトルを渡すためにペースを上げると須田は間違いなくついてくる…逆に自分一人では前に追いつく事も出来ないだろう。いや…それよりも、ボトルを届けないと仲谷自体、競技続行が厳しいかもしれない。どうする?私がアシストとして今しなくてはならない事は何だ?恐らくボトルを届ける為に脚を使ってしまうと、それから先はもう働けないだろう。でも、須田に追いつかれると…須田は前に出る必要がない。渡辺とも1分の差を持っている。どうすれば…

「ユウコ。アナタは太陽になりなサイ。」
突然ランスの言葉が大島の脳裏によぎった。そうか…ようやくわかった。
大島がペースを上げた。凄まじいスピードで坂を上って行く。さすがの須田も離されていく。

私が照らさなくてはいけないのは…一人だけなんだ。


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