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64.


ツール・ド・ジャパン6日目。いよいよツアーは最後の山場を迎えた。
「ツイン・ピークス」。最初の超級山岳はスタートの長野市からいきなり始まる。標高差1800mの志賀草津道路を駆け上がり、その後一気に万座温泉からのダウンヒル。その後、一旦軽井沢への1級峠を登り、ラストは標高差1600m、八ヶ岳麦草峠での山頂ゴールだ。
今日で山岳賞、そして総合優勝争いが決する事になる。



リーダージャージを死守すべくスタートから栄中日は全員を須田亜香里の周りに配した。スプリンターの珠理奈、桑原、仲西も動員しての万全の体制だ。その為に前日のスプリントステージも最終日の優勝をも犠牲にしても構わない布陣であった。
それを追うK'sレーシングも大島・前田の二人を中心にエースの仲谷を牽いていく体制を作っている。エースアシストの仁藤を失っているものの、板野・峯岸二人の山岳を得意とするアシストは回復を見せていたし、秋元・宮澤・横山も最初の山では十分仕事をするだろう。

一方で渡辺麻友を擁するスキルA、そして協調を組んだチームBとサイクル4からは強いモチベーションが感じられなかった。チームBは昨日のスプリントに参入した事で主だった選手に消耗の後が見られる。もともと山を得意とするメンバーが少ないのがチームBの構成だ。スキルAも高橋と岩佐が序盤の落車の後遺症が思いのほか大きく、ここにきて計算が立つとはいえない状態。ずっと渡辺を支えてきた指原と、今日は篠田と片山を始め数だけは揃っていたが、明らかに他チームよりも勢いはなかった。

本当に私は強いんだろうか?…実はただ思いあがってただけじゃないの?今回だって…確かにトラブルはあった。でも、肝心なところで一人でも行くんだって気合があれば、勝てはしなかったかもしれないけど、こんな風にリードを広げられることもなかったかもしれないんだよね…乗鞍で見た最後のなかやんの走り…優子さんの犠牲を無駄にしないんだ…そんな気迫が背中から感じられた。こないだ話してた時の優しそうな表情からは想像も出来ない気迫だった。

渡辺は指原の姿を後ろかじっと見た。ジャージのゼッケンは汚れ、膝にはテーピングが巻かれ右肘には擦り傷を保護するシートが貼られている。その横を走る篠田の姿にも目をやる。その大きな身体は明らかに山岳ではディスアドバンテージだ。それでもバイクを右へ左へ揺すりながら険しい志賀高原への山岳を登っている。みんな必死だ…でもそれは当然の事。エースを勝たせる為にアシストが死力を尽くすのは当たり前の事だ。彼女達はそうしてプロとしての報酬を得ているのだから。でも…私はどうなんだ?彼女たちが犠牲を払うに相応しい走りが出来ているのか?結果…いや。結果だけじゃないんじゃないか?プロだから結果を求められるのは当然だ。しかし…私は、彼女たちの犠牲の上に立つことの覚悟が出来てるんだろうか?

渡辺の脚は重かった。すでにギアは一番軽いところまで落としている。ただ、回転数が一向に上がらない。身体が重い…クランクを回すのは脚だけではない。気持ちが乗って来ないと山は登れない。上林温泉を過ぎ九十九折りが始まった辺りで徐々に渡辺が集団から遅れ始めた。それは、スキルAにとってのツール・ド・ジャパンの終戦を意味していた。

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