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59.




厳しかった4日間を終え、ツールは休息日を迎えた。選手たちにとっては束の間の…しかし大切な休養日だ。

休息日と言ってもただ身体を休める訳ではない。渡辺麻友は朝早くから宿泊先のホテルを朝早く出て単独でバイクを走らせていた。殆どの選手がこうして休息日でもバイクにまたがる。彼女たちにとってバイクに乗る事は食事を摂るのと同じくらい日常生活の中に組み込まれてる事柄なのだ。

面白くない。なんなの?昨日の大島優子は。あそこで自分のバイク差し出しちゃってさ。いいじゃん、仮にもディフェンディングチャンピオンだよ?幾ら今年はアシストって言われてても、普通だったらあそこは自分が行くでしょ?大体、ウチのアシストの弱さってなんなの。わざわざ他チームまで巻き込んで手下につけたって結局は使えないのばっか。あーあ…移籍先間違えちゃったかな。これじゃ、せっかく押し寄せて来てるヨーロッパチームのスカウトに見向きもされないじゃない…

悶々とした気持ちのまま軽いサイクリングを終えた渡辺はバイクを仕舞い、ホテルのロビーに入っていった。9月とはいえ、まだまだ気温は高い。それでも渡辺は汗一つかいていなかった。ジャージ姿のままロビーのカフェに入りトマトジュースを2杯とパスタを2人前注文した。そういえば、走りに行く前にもまともに食事をしていなかった。

とても細身の女性が食べる量ではない食事をお腹におさめ一息ついたところで、渡辺は近くのテーブルに一人で座っている仲谷明香を見つけた。何やら真剣な表情で本を読んでいるようだ。普段、他チーム、いや同じチームの選手に気軽に話しかけるタイプではない渡辺だが妙に仲谷の事が気になった。暫く迷って声をかけてみる事にした。立ちあがって仲谷のテーブルの方に歩み寄る。

「あの…仲谷さん…」
仲谷が顔を上げた。渡辺は仲谷が手にしてる本を見て驚いたような表情になる。
「あ、弱虫ペダル。あれ?それ何巻?」
「え、21巻ですけど。」
「え~、もう出たの?嘘~チェックしてなかった。私単行本で読む派だから、早く出ないかな~って気になって気になって。」
「渡辺さんも読んでるの?弱虫ペダル。」
「いや~当たり前でしょ~。今やロード乗りのバイブルでしょう。」
「良かったら、読まない?私もう何回も読んじゃったから。」
「え、いいの?いいの?マジで~?」
「良かったら、ここ、どうぞ。」
仲谷が柔らかく笑って隣の椅子を渡辺に勧めた。

「へ~、そっかぁ。御堂筋君はやっぱこうじゃなくちゃなぁ。」
「おお、坂道、まだここで行けるんか。すげー」
渡辺の子供のような横顔を見て、仲谷がくすっと笑った。
「ん?あ…ごめん。私、コレ読んでると高まってきちゃって。独り言言っちゃうんだよね。おかしな子でしょ?」
「ううん。私もそうだもん。面白いからね~。で、渡辺さんは御堂筋君派なんだ?」
「え?なんで分かった?だって、あんな風に勝負に徹する姿ってエースとして当然だと思うんだ。人間的に冷徹過ぎるっていう批判をする人は本当のレースを知らない人じゃないかなあ。仲谷さんは誰派?」
「私は真波山岳君。」
「お~イケメン好きですな?」
「ばれた?」
渡辺と仲谷は声を上げて笑った。まだ少ないカフェの客が何事かと視線を送ってくる程だった。


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※「弱虫ペダル」 週刊少年チャンピオン連載中のロードバイク漫画。興味ある方はwikiとかでww

60. | Home | 58.

Comment

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

2012.02.06 (Mon) | 履歴書の見本 #- | URL | Edit

>>履歴書の見本さま

ありがとうございます。

2012.02.08 (Wed) | 四谷 #mQop/nM. | URL | Edit

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