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41.


「おはよう。良く眠れた?」
野呂佳代が朝食を終えた島田晴香に声をかける。
「はい。ぐっすり。脚の疲労も全然感じませんし。体調はいいです。」
島田は無邪気な笑顔で答えた。笑うと子供のような表情になる。とても、あの凄まじい闘志でスプリントを制したのと同じ人物とは思えないほどだ。
「そっか、良かった。多分、そのリーダージャージ着れるのも今日までだろうから、存分に堪

能してな。頼むよ、今日からはアシストの仕事になるけど。」
野呂が赤いボトルを島田に手渡して言った。
「分かってますよ。昨日までいい思いさせてもらいましたからね。指示出してくれればその通り働きますよ。」
島田は顔では笑いながら複雑な思いでいた。楯突くような走りをして、K'sへの加入話はきっと無くなっちゃうんだろうなぁ…



ツール・ド・ジャパン3日目。レースはいよいよ山岳ステージに入る。今日のステージは2つの1級山岳、3つの2級山岳を含む総距離226.2kmに及ぶハードなコースだ。山岳賞だけでなく総合優勝争いに大きな影響を与えるステージである事はどのチームにも分かっていた。明らかに昨日までの2日間とはスタートラインに並ぶ選手たちから放たれる空気が違っている。島田はその中心で説明のつかない息苦しさを感じていた。みんなが、この黄色いジャージを見ている…いや、睨んでる。いつまでもお前にそれを着させてはおかないよ…それは、島田が「警戒すべき相手」として認められた証拠でもあった。



レースはいきなり動いた。
スタート地点のモリコロパークのパレードランが終わると、いきなり一人の選手が飛び出した。昨日までの様子見の飛びだしではない。集団に厳しい緊張が走った。なぜなら飛びだしたのは昨年の総合チャンピオン、大島優子だったからだ。

総合優勝候補の最右翼の大島の飛び出し。誰もが予想していなかった展開だ。
「こりゃヤバイ。K'sは早々に勝負つけにきたよ。昨日ウチがやろうとした事を今日K'sがやってくるとは思わなかったけど…湯浅さん、追っかけさせましょう。」
サポートカーの中で牧野が湯浅に言う。湯浅は頷いてインカムで松井玲奈に呼びかけた。
「玲奈。大島が行っただろ?恐らく何人かアシストも追うはずだ。それについていけ。向こうがアシストを2人出すならこっちも2人。3人で行くなら3人つくんだ。須田をちゃんと連れていってな。」
「わかりました。私もその中に入っていいんですね?」
「ああ。この先今日は山岳だ。大矢、木本、矢神…わかってるな?」
「わかりました、あ、どうやらスキルAも追いかけるみたいですよ。」

大島の反応にいち早く反応したのが、スキルAだ。K'sのアシスト部隊が出動する前に高橋みなみが岩佐、指原とともにエースの渡辺を引率するように大島の後を追った。K'sも仁藤、板野、峯岸が出る。チームBからは石田、鈴木、小林が前に上がって行く。これは総合狙いというよりは山岳ジャージ狙いだろう。3人とも山岳のスペシャリストだ。マークすべきはK's大島とスキルAの渡辺だ。どちらも3人のアシストを連れて行った。玲奈は考えた。湯浅さんは同じ人数で行けと言った。でも、それでいいのかな?なんか違和感がある。なんだろう?ここは向こうに合わせてちゃダメな気がする。

「湯浅さん、5人で行きます。」
「おい、山岳アシスト全員使うつもりか?まだ先はあるんだぞ?」
「分かってます。でも、勝ちに行くならどこかで賭けを張らなくちゃ。」
「それはそうだが…」
「久美を残します。あかりんは…私と花音、真那、あと…珠理奈、いけるね?」
珠理奈が頷いた。

大島に後続が追いついた。
3日目にして早くも総合争いの戦いが幕を開けた…ように見えた。

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