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33.


「しっかし…ありゃ、本物かもよ。とてもオールラウンダーって体型じゃないけど、あれで山も登れるんでしょ?」
「うん。幾ら全開じゃなかったかもしれないにせよ、あれだけのメンバーが出てた乗鞍でも優勝してるし。ランスもえらい逸材を見つけてきたもんだ。」
秋元才加と宮澤佐江がサイクル4の賑やかな食事を遠巻きに見ながら話していた。K'Sの宿舎も同じホテルだった。今日の見事な逃げ切りを目の当たりにして、来年チームに入ってくる島田の存在感を改めて実感しているといったところだ。
「普段どんなトレーニングしてるんだろうね?興味あるな。」
秋元がつぶやく。専門的なコーチがついている事もないんだろう。普段からストイックに自分を追い込む秋元にそんな風に関心を持たせるに十分な島田の活躍であった。

「ん…?あれ…恵令奈じゃない…?」
宮澤がホテルのロビーの車椅子姿の小野を見つけ秋元に呟く。
「ホントだ…何してるんだろ?」
「声かけてくる?」
「いや…いいよ。恵令奈も気まずいだろ。あれから何年もずっと話すらしてないからね。」
秋元が宮澤の言葉に首を振る。会話を切り目の前のパスタに集中しはじめる。
「そうだね…それに、なんか誰かを待ってるような感じだし。」

小野の所に現れたのは、野呂と浦野だった。チームはまだ食堂で談笑しているところだった。盛り上がってる場を中座してきたようだ。3人は、そのまま人目を避けるようにロビーから姿を消した。

「えれぴょん…いや…スゴイ効果だわ。」
野呂が小野に感服したような笑顔を作って言う。
「言ったでしょ?ちゃんと調合には自信もってやってるって。」
「でも…今日はヒヤヒヤしたよ。草レースと違ってドーピング検査あるんだからさ。もし引っかかったら…って。」
「大丈夫だって。絶対引っかからない。発想の転換だって。禁止薬物をどう誤魔化すかじゃ無理があるの。今のアンチ・ドーピングの精度はどんどん高くなってるからね。じゃなくて、禁止されてないものを組み合わせる事で同等の効果をどう産むか。これが大事なの。」
小野が不敵に笑う。
「でも…ちょっとは禁止薬物が入ってるんでしょ?」
浦野が頬を赤くして聞く。配られたワインだけでは足りず、部屋の冷蔵庫から出したウイスキーをストレートで飲んでいる。今回サポート役に回っている浦野には酒を控える理由は余りない。
「まあ…ね。でも、基準内なら何も問題なし…でしょ?」

「ねえ…ひょっとして…このまま島田が総合まで取っちゃったら…どうする?」
野呂がちょっとだけ不安そうな表情を浮かべ小野に聞く。
「チームオーダー出てるんでしょ?どこかのお偉いサンから。島田も、まだ自分の身体の中の秘密に気づいてないはず。後は、上手く煽ててすかしてなだめて…ノンティさんの采配しだいすよ。」

島田を潰すのが本来の狙いじゃない。もちろん、あの子をスターにする為に仕組んでるわけでもない。どこで爆弾を爆発させるか…全ては私の考え次第なんだ。
ふふふふ…今年のツール・ド・ジャパンは、私の手の中で動いてるんだよ。まだ誰も気づいてないけどね。

小野はホテルの窓に広がる京都の夜景を眺めて小さく笑った。

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Comment

いつも楽しく読ませてもらっています。
早速話の内容に移らしてもらいますが、えれぴょんがはるぅに悪事をして何か落としいれようとしていますね。ドーピングまでいかないけど、ドーピングになりそうですね。普通の話を書くのかと思っていたので、驚きました。何か怖いような楽しいような感じです。楽しみにしています。

2012.01.30 (Mon) | なたや #LkZag.iM | URL | Edit

>>なたやさん

今回はプロの世界の話なので…
実際のロードレースでもドーピングって結構大きな問題でして。
前に書いたスポーツものとはちょっと違うテイストかもしれません…

2012.01.31 (Tue) | 四谷 #mQop/nM. | URL | Edit

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