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14.


「わ…私がK'sレーシングにですか?」
島田晴香はまだ狐につままれたような思いでいた。目の前に座っているのは、あのランス・アームストロングだ。ちょっと見学に来ないか…そう声をかけてくれたのは、高校時代、レースでよく顔を合わせていた横山由依だった。それが、まさかこんな話が用意されていたなんて…

確かに卒業後はどこかプロチームに入りたいとは思っていた。しかし、自転車部もない大学に進み普段はクラブチームで走ってる島田に特段のルートがあるはずもなかった。しかし、どこにチャンスが転がってるかわからない。まさか、国内最強プロチームからのスカウトを受けれるなんて。島田は天にも昇る心地でランスの話を聞いていた。

「アナタには見事な実績も、そして実力もありマス。残念ながら我がチームには、まだ一級品と呼べるだけのスプリンターはいまセン。K'sは総合だけ狙ってチャレンジングなレースをしない…そんな風に言われるノハ、ワタシも面白くアリませン。ぜひ、スプリントも強くしタイ。ワタシはアナタのポテンシャルを高く評価していマス。どうか、ヨイお返事をお待ちしてイマス。」
「こ…こ、光栄です。すぐに…でもお返事を…」
「はははは、慌てなくても大丈夫です。自分の人生デス。じっくり考えてくだサイ。今日は、ゆっくり見学していくとイイ。ユイに案内させまショウ。デハ、ワタシはこれで。」
応接室を出ていくランスに島田は立ち上がって一礼した。まだ、心臓の鼓動が治まらない。すぐに入れ替わるように横山が入ってきた。

「じゃあ、案内するわぁ。今日はこの後、全体ミーティングがあるから、大方の人も揃っとるから紹介もするしぃ。」
久しぶりに会った横山は相変わらず柔らかな京都弁で話す。このはんなりした雰囲気に惑わされてはいけない。レースの時の豹変したその姿には脅威すら感じるほどなのだから。
「ここが、トレーニングルームや。」
島田は目を見張った。広いスペースに最新鋭のマシン、解析用の機器…スゴイ…これがトップチームの持つ設備なのか…

「由依、お客さん?」
声をかけてきたのは、宮澤佐江だ。首にかけているタオルで汗を拭っている。トレーニングを終えたばかりなのだろうか。
「は…はじめまして…わたし…」
「知ってるよ~。島田晴香…さんだよね?」
「え…?は、はい。島田です。」
「おー!ホントだ、去年のおきなわチャンピオンじゃない。あれ?見学?ひょっとして来年からウチに来るとか?」
島田の存在に気付き秋元才加がマシンから降りてやってきた。

いや…なんで二人が私の事なんかを知ってるの?宮澤さん、秋元さん…K'sレーシングの誇るツインタワー…大島優子が強いのはこの二人がいるからだ。特に平坦路での二人の強力な鬼牽きは今すぐにでも本場ヨーロッパで通用するとすら言われてる。

「あ…今日初めてそういうお話を頂いたので。でも…私としてはぜひこちらで…」
島田がそう言いかけた時、背後から殺気のような気配が近づいてきた。その気配に島田が思わず後ろを振り込む。

「ふ~ん…スプリンターかぁ。確かにいいバネしてそうだね。でもねぇ…もうちょっと絞れそうだね。きちんとここで鍛えればモノになるかも。」
そうクールに言い放った女がまっすぐ目を見ながら手を差し出した。
「宜しくね、島田さん。私は仁藤萌乃。」
「はい、よく存じてます。ヨロシクお願いします。」

仁藤萌乃…スプリントステージではゴール直前までエースを牽き、最後は「発射台」となり、山岳では根尽きるまでエースを引っ張り最後は自らの身を潰してまで走る。自分が勝つことが出来ないどころか、完走する事すらままならない事も多いが、その力は高く評価されていた。特にスプリントステージでは決して大きくない身体で他チームのアシストに睨みをきかせポジションを死守する事から、その切れ味鋭い走りを評し「ジャックナイフ」の異名をほしいままにしていた。

「あっちにウチのエースがいるから、後で挨拶だけしといたら。今はちょっとやめといた方がいいかもしれないけど。」
仁藤が奥でひたすらマシンのペダルを回す大島優子の方を向いて言った。
この部屋に入った時、すぐにわかった。やっぱりオーラが違う。遠くにいても、大島が放つオーラは圧倒的だった。
スゴイ…こんな人たちがいるチームで私も走れるのか…島田は胸を躍らせた。

「あのさ…由依。前田さんと仲谷さんは?」
「あぁ、あの二人ならめったにここには来られへんで。いつも別行動や。」
「え?そうなの?」
「あの二人の事は、ウチらもようわからへんのよ。」

そっかあ。また違ったオーラ持ってるんだろうな。前田さん、会ってみたかったなあ。ま、いっか、ジャパンでも会えるだろうし。

島田は横山の案内で、施設内をくまなく見て回った。充実した設備、恵まれた環境、どれをとっても最高だ。島田は早くもライトグリーンのジャージに身を包む自分の姿を想像して顔を緩ませていた。

15. | Home | 突然ですが…

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