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13.



平坦ステージの戦い方は難しい。最後の最後、エーススプリンターによるアタック合戦の為にチームメイトはそこまでの間、ひたすらエースの脚を温存させる。1チーム8名が参加するこのTOJでは、だいたい隊列の中盤にエースを置き、先頭を4人~5人が交代で牽いて行く。時には何人かの逃げ集団が形成されるが、その逃げを容認するか潰すのか…そういう戦略的判断も求められる。よーいどんで山を登って、最初に登り切った者の勝ちというフルクライムレースのほうがある意味もっとシンプルだ。

ところが、今年のTOJはそんな例年の経験則から来る展望がたった2名の選手によってあっさり打ち破られた。

前田敦子と仲谷明香だ。

初日の大阪、2日目の堺両ステージ。ともに70キロの周回レースだが、中盤で逃げた前田と仲谷、二人のアタックを最後まで集団は捕まえる事が出来なかった。2日続けて…しかも、たった二人の逃げが決まる事は長いTOJの歴史でも無かった事だ。しかも、前田は仲谷にだけ前を牽かせる事なく交代で先頭の空気抵抗を受けながら走り切った。

第3ステージ、このままでは済ませないとばかりにスプリンターを抱えるチームBが戦略を変えてきた。柏木、河西を始めとしたオールラウンダー4名が二人を徹底的にマークし、宮崎・増田・佐藤・平嶋のスプリンター4名を逃がす作戦だ。一旦は2分近い差をつけさせ、戦略がはまったかに思えた。しかし、ほんの僅かの隙をついてアタックを仕掛けた仲谷について行けたのは前田だけであった。結局、4人で逃げた宮崎達は二人で追った前田と仲谷に残り2キロであっさり追いつかれた。

「むこうもずっと二人で追ってきたんや。相当キツいはずやで。ここで踏ん張りや!みゃお、最後で発射できるようなっちゃんと亜美菜に付いて!」
増田が叫ぶ。前田と仲谷の後に続こうとした。

「あっちゃん…」
仲谷が小声で合図を送るように前田に話す。その声に反応するかのように前田がそのまま前へと上がっていく。特に仲谷がブロックしたわけでもない、チームBの4人はあっさり引き離されていった。ゴール前のスプリントへの参加資格さえ与えないまま、そのまま前田はゴールへと独走した。

「バケモノだ…何年か前まで日本にいた時はここまでじゃなかったぞ…こりゃ、ウチひとチームだけじゃ到底立ちうち出来るレベルじゃねえぞ…」
サポートカーに乗り込んだチームBの戸賀崎はため息をこぼした。

第4.第5ステージはさすがの二人も勝負をかけてこなかった。ただ、ロードレースはトップと同じ集団でフィニッシュすればタイム差は「0」とされる。集団スプリントとなり、ステージ優勝はチームBの宮崎と栄中日の松井珠理奈の手に渡ったものの、前田と仲谷は集団の中でゴールし、3日目までの貯金をしっかりと守った。

前田と仲谷が真の意味で周囲を震撼させたのは、唯一の山岳ステージの第6ステージだった。富士あざみラインの標高差1100メートル、平均10%最大22%の斜度の山岳は本場ツールのそれに匹敵すると言われる。もっとも、グランツールでは、1日にこのクラスの山を2回登ったり、それが3日も4日も続くのだが…

ここで、スタート直後から飛び出した二人は3位以下に3分という大差をつけて逃げ切った。戦略上の逃げが決まったわけではない。ただ、単に二人のペースに各チームのエースクラスが全くついていけなかったのである。強豪チームのエースクライマーが参加していないとはいえ、この差は圧倒的だった。スプリントもこなせ山でも強い…しかも、前田だけでなく仲谷のこの強さはなんだ?ジャパンではここに大島が加わる。秋元、板野、宮澤、仁藤…アシスト陣にも全く隙がない。今年のジャパンでの興味は「どこのチームが勝つのか?」ではなく、大島と前田はどう共存するのか?そういった事に移ってしまいつつあった。

残りの3ステージは二人にとって消化試合のようなものだった。5日間で作った4分以上の差は平坦ステージしか残していない状況では圧倒的な差だった。二人はただ、先頭集団から遅れないように走ればいいだけだ。最終ステージで半ばやけくそに打たれたチームB全員の逃げにもあっさり後方をキープしてゴールへ。最後は前田が大きく仲谷に前を譲った。総合優勝は仲谷の手に、前田には第1・第2・第5ステージの優勝とスプリント賞(各ステージに設定されたスプリントポイントを通過した順に与えられるポイントを蓄積したもので競う。通常フィニッシュでのポイントが最も高い)、そして山岳賞が与えられた。普通、スプリントと山岳の両賞を同時に得る事は少ない。それは前田が最強のオールラウンダーである事の証だった。

表彰台の一番高い所に立った仲谷を見ながら、前田は軽く微笑みを浮かべた。

前田敦子は強い。誰もがその事はわかっていた。しかし、これまで全く実績らしい実績を持っていなかった仲谷の見事な走りは、それ以上のインパクトを持って全国に響き渡った。

「参ったな。こりゃ。」
「あ…秋元さん。まったく、ランスもとんでもない事を…しかも、こんな隠し玉まで用意してたなんて。去年まで秋元さんのトコの選手じゃないですか?全然気がつかなかったんですか?」
「ああ…全然目立たない子だった。特にこれといった強みもなくてな。」
「天下の秋元康の目に留らなかった…いったいランスはどんなマジックを使ったんですかね?」
「まあ、逃した魚の大きさを悔やんでも仕方ない。それよりも…ちょっと相談したんだが。時間取れないか?」
「相談って…あの…これ以上選手は出せませんよ?それでなくても、渡辺を持ってかれてこっちは…」
「まあ、ちょっとつきあえよ。悪いようにはしないから。」

戸賀崎は秋元について歩いて行った。
確かに…このままじゃ、ジャパンで惨敗するのは目に見えている。
俺の首も危うくなってくるだろうな…

突然ですが… | Home | 12.

Comment

いつも楽しく読ませてもらっています。リクアワ楽しかったですね。朝のニュースでダイジェストみたいなのも見ました。スポーツ新聞にもでかく載っていて良かったです。昨日書かせてもらおうと思っていたのを、今書かせてもらいますね。47都道府県ツアーをやるのが三日目に発表されましたね。休日だとしても行けるとは限らないので、現場に初めて行けたらいいなぁと思います。
話の内容に移らしてもらいますね。だんだん話が進んでいって楽しいです。まゆゆの反抗的な態度は、ネズミみたいですね。麻里子さまにまで突っかかるとはまゆゆは怖いです。SDNのメンバーやスタッフまで出すとは四谷さん凄いです。
それと東京の方では今、雪が降っているかもう少ししたら降るのでしょうか。お体にはご注意くださいね。僕の地域では雪が降るのは五年に一度ぐらいですね。僕の記憶上は積もったのは二回だけです。楽しみにしてますね。

2012.01.23 (Mon) | なたや #LkZag.iM | URL | Edit

>>なたやさん

全国ツアーはこれまでなかなか現場に馴染みのない人には嬉しい企画ですよね。
チケットは争奪戦になると思いますが…行けるといいですね。

まゆゆのキャラは、おっしゃるとおり「ネズミ」ですね、ホント。
どうしてもあの役はハマり役だったと思うので、ついつい(笑)。

雪は大変でした。一晩たっても残ってたので…

2012.01.24 (Tue) | 四谷 #mQop/nM. | URL | Edit

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