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ラストシーン



「私・・・何やってたんだろ・・・?」
誰もいない早朝の劇場で花崎がぽつんと呟いた。
「誰も彩音を責められないよ。でもね、幾ら理由があったとしても、人を殺めるって事はいけない・・・おじいちゃんの言う事は間違ってないと思うよ。」
隣に座ってる島田晴香が慰めるように言う。
「結局、良かれと思って考えた事が、篠田さんにも麗華さんにも・・・
どちらにも不幸を招く事になっちゃった。」

「お~い、何を暗くなってんだ?」
「あ、麻里子さん・・・ですよね?おはようございます。」
島田が篠田の顔を確かめるように聞いた。
「あはは。麻里子だよ。麗華はマンションにいる。さっき別れてきたんだ。
麗華には先にフランスに行っててもらう事にしたから。」
篠田はそう言ってステージの上に上がった。
「ここをね、最後に見ときたいなって思ってさ。」

「篠田さん・・・昨日の話、決定的な証拠にはならないと思うんですだって、幾らワインを開ける事に慣れてる人でも、切迫した状況だと慌てて失敗しちゃうことだってあるんだし…」
「うん。そうだね。でも・・・いいんだ。もう決めたの。麗華と二人で話してね。」
篠田がステージから客席を見下ろしながら言う。

「ごめんなさい。私・・・私、篠田さんから大切なものを奪っちゃった・・・」
花崎が立ち上がって言った。大きな瞳から涙がこぼれる。
「何言ってんの?奪った…なんて。私は罪を償わなきゃいけないんだ。最初はね、あの男に弱みを握られた事を悔やんだよ。でもね・・・もともと、世間を欺いてたのは私たちなんだ。私ね考えたんだ。あの男を殺そうって思ったのは、脅された研究生を助けようって・・・もちろん、それはあったよ。でもね、ホントは自分たちを守りたかっただけだったんだ。」
篠田の顔には笑顔があった。どこか清々しさすら感じる笑顔だった。

「ねえ、彩音。この場合、抒情酌量っていうの?少しは考慮されるかなあ?そんな甘い事考えてちゃだめ?」
「いえ・・・脅された上での犯行という事が立証されれば、十分可能性はあると思います。祖父も、その辺りは明らかにしてくれると・・・」
「そうね。アンタのおじいちゃんだもんね。ね。彩音。もっと素直になりな。アンタ、おじいちゃんの事、誇りに思いたいんでしょ?」

「わかりません・・・私、まだ子供なんで。でも・・・これからもっと勉強します。そして将来は警察関係の仕事に就きたいと思っています。そして、答えを探したいって思います。正しいって何かって事。」

「そっかぁ。じゃ・・・アイドルはどうするの?ここで辞めちゃうのは勿体ないよ?」
「はい。続けます。とことんやってみます。篠田さん、いいですか?」
「当たり前じゃない。辞めるなんて言ったら、怒鳴ってやろうと思ってた。」

「どうせなら、キャリア目指したら?カッコいいじゃん、元アイドルの警察官僚。」
島田が茶化すように言った。
「もちろんですよ。やるからには、トップを目指します。
あ、まずはアイドルとしてトップを取りますから、私。」

花崎が精一杯の笑顔を篠田に向けた。
「楽しみだな。でも、珠理奈が黙ってないかもよ~」
篠田がそう言って笑った。

ゆっくりと劇場の出口に向かって歩いていく。
後ろを振り向く事なく扉を開いた。

あとがき | Home | シーン37-3.

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