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シーン32.



「本当ですか?検察が起訴を見送る可能性があるって?」
西園寺が驚いた声を上げる。古畑が無言で頷いた。
「間違いなく、どちらかが犯行を犯したんです。それは揺るぎのない事実だ、なのに・・・」

二人に対しての徹底的な事情聴取が続けられていた。
しかし、それぞれの口から出てくるのは「自分がやりました」との言葉だけ。
決定的な証拠とされた被害者の血が付着したコートも、どちらの持ちものかを特定する事が出来なかった。

「くそっ・・・双子・・・か。」
西園寺が忌々しく呟く。
「でも、古畑さん。コートがどっちのものか解ればいいんでしょ?
それに、被害者の手に犯人の髪の毛が握られてたって事もわかったんじゃ?
鑑識で解らないなら科捜研で・・・」
今泉の言葉に古畑が片手で手を振った。
「今泉さん、そんな事はとっくにやってますよ。DNA鑑定って事ですか?今泉さん、解ります?戸籍上は別人でも、篠田麻里子と南麗華は双子なんですよ。DNAでの判別はほぼ不可能です。唯一頼りになる指紋は、犯行と結びつく物証からは何も検出されていません。」

古畑が目の前に堆く積まれた判例集のうちの一冊を持った。付箋の貼ってあるページを開く。そこには、どちらかの犯行に疑いのない殺人事件の容疑者として起訴された双子に無罪判決が下された高裁の判例が記載されていた。
解説には「疑わしきは罰せず。法解釈の限界」といった論調の文章があった。判決趣旨として、「どちらかが犯行に及んだ事は明白であるが、そのどちらかを特定できない以上、無罪の者に罪を負わせることは出来ないとした」ともある。

「え~・・・起訴するかどうかは検察の判断。そして・・・仮に起訴されたとして・・・判決を言い渡すのは裁判官の仕事。私達の仕事ではない・・・」

古畑の声は苦かった。
「え~・・・私は今日はもう帰るよ。」
「お疲れ様でした。ゆっくり休んでください。」
「西園寺君・・・ちょっと付き合わないか?たまにはいいだろう?
安くて美味しいワインが揃ってる店があるんだ。」
「はい・・・お伴します。」
「え?古畑さん、僕も。僕も連れてってくださいよ。」
「君はうるさいからダメ。」
「そんなぁ。いいじゃないですかぁ。」
「・・・わかったよ。仕方ないな。じゃあ、早く帰り仕度して。行くよ。」

シーン33. | Home | シーン31.

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