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シーン31.



「え~・・・篠田さん。もう一度確認させてください。浜田さんを殺したのは自分だ。
そうおっしゃるんですね?間違いありませんか?」
「はい。その通りです。あの男を殺したのは私です。あの日、現場近くの喫茶店で話をした後、貨物列車の倉庫の中に誘いこんで、その場にあった石で殴って殺しました。」
「え~・・・しかし。あなたには完璧なアリバイがあったはずですが?」
「その時、撮影現場にいたのは私ではなく、麗華です。その後あっちゃんちに泊りに行ったのも。」
「え~・・・しかし・・・事件当日着ていたコートは麗華さんの部屋で発見されたのですが?」
「それは私が頼んだんです。預かっててくれって。」

西園寺が古畑に耳打ちをする。
「古畑さん・・・南麗華の方も供述を変えていません。やはり、やったのは自分だ・・・と。」
古畑が腕を組んで目を閉じる。

「え~・・・困りましたね。篠田さん。あなた方お二人の美しい姉妹愛には心打たれるものがあります。しかし・・・嘘はいけません。はっきりしてる事は、あなた方のどちらかには、完璧なアリバイがある。しかし・・・同時に、どちらかが犯行を犯したという決定的な証拠がある。そして・・・犯人の可能性がある二人が二人とも自分がやった事だとおっしゃる。間違いなく、どちらかが嘘をついています。」
古畑の声は苦かった。

篠田の隣では花崎が無表情で座っている。
古畑には解っていた。このシナリオを書いたのがこの子だという事を。
こうなったら、身内・・・という考えは捨てなくてはならない。
ここから先、この年齢に似つかわしくない明晰な頭脳を持つこの少女は・・・まぎれもなく、自分の戦わなくてはならない相手・・・敵だという事を認識しなくては。

「え~・・・花崎さん。」
そう呼ばれて、花崎の表情が乱れた。祖父にそんな風に呼ばれるのは初めてだ。
表情も自分が知ってる柔らかなままだが、どこかに厳しいものを感じる。

「はい。なんですか?」
「あなたは・・・本当に篠田さんがこの事件の犯人だと?」
「わかりません。私はただ、篠田さんがそうおっしゃったので。」
「なるほど。しかし、困りました。これで操作は振り出しです。残念ながらお二人のどちらかが犯行を犯したとう証拠はありますが、それがどちらの手によって行われたか・・・という事になると・・・これまでは、麗華さんの自供がありましたので、それを根拠にしていたのですが、お二人ともが自分がやった・・・とおっしゃられると、私どもにはそれを特定する材料を今のところ持ち合わせておりません。」
古畑が立ちあがって窓のブラインドを上げる。取り調べ室に光が差し込んできた。

「とにかく、暫くは篠田さんにお話を伺う事になりますが・・・」
「はい。お願いします。」

「おじいちゃ・・・いえ、刑事さん。古畑さん。南さんの拘留期限は延長されるんですよね?
こういう事態だと、検察も起訴まで踏み切れないでしょうし。」
「え~・・・よくご存じだ。そうですね・・・思えば、あなたは小さい頃から、アニメの代わりに刑事コロンボのビデオをせがみ、絵本の代わりに金田一耕助の小説を愛読していた。小学生高学年になると、難しい判例集を読みあさる変わった子でした。私は随分責められたものです、あなたのお母様にね。」

「母の話はしないで!」
花崎の声が大きくなった。古畑を睨む。
「後ほど、弁護士がお邪魔すると思います。私はこれで・・・」
「わかりました。え~西園寺君、彼女をお送りして。」

花崎が篠田に一礼して部屋を後にした。
古畑がそれを苦い表情で見送る。

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