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シーン16.


新曲のPV撮影日。既に歌入れは完了していた。
今回のPVはAKBグループ全員が参加して行われる事になっていた。

設定は学校の体育館。かつて名門と呼ばれた母校を訪れる、前田・小嶋・高橋・柏木らの卒業生。篠田、大島は教師役だ。しかし、そこで卒業生が目にしたのは、かつての輝きを失いつつあり、生徒の覇気も失われつつある母校の姿だった。
その荒み始めた学校に現れた新入生、花崎彩音が上級生の渡辺麻友や島崎遙香、多田愛佳らを巻き込みながら体育館ライブを敢行する。最初は冷めた目線でみていた生徒たちも花崎たちの熱意に動かされ…というシナリオだ。
ロケ地は都内の高校の体育館。ライブ会場となった体育館には生徒役として、今回選抜に選ばれなかったメンバー全員がエキストラとして姿を見せていた。

「これって、メンバーへのお披露目って意味もあるんじゃないの?」
「そうかもね。なんかさぁ、ちょっと癪にさわるよね…彩音のせいじゃないけどさ…」
研究生からは相変わらず不満の声が上がる。
何度か接しているうちに本人への蟠りは解け始めていたが、それでもまだ納得は出来ていないようだ。
「そうだよ。彩音も可哀そうなんだよ。いきなり選抜、しかもセンターなんてさ。」
「そうそう。あの子は確かにイイ子だけどさ。これじゃファンも…ねぇ?」

「アンタ達、まだそんな事言ってるの?」
「あ…島田さん。それに島崎さんも…」
「あのね~今から撮るライブシーン、オケじゃなくて生歌で歌いながらやるんだって。」
島崎が言う。島田の顔を見ながら笑った。
「私は別の機会に聞かせてもらってるけど…ぱるは…でしょ?」
「うん。ま、見ててごらん。スゴイもの見れるからさ。」
「あ、始まるみたいだよ。」
「うん。じゃあ行ってきます~」
「さ。用意しよっか。」

「は~い。じゃあ、ライブシーンから行きますよ~。事前の打ち合わせ通り。
本物の劇場公演を見に来た感じで盛り上がってくださいね~」
ADから指示が飛ぶ。
アンダーメンバーとして今回のカップリング曲のセンターを務めた増田有華の姿もあった。

新曲は復活を果たしたプリンセスプリンセスの奥居香が作曲を担当した軽いタッチのロックンロールだ。
スタンドマイクがセンターを中心に並べられた。
「なんか、大声ダイヤモンドみたいだね。」
「うん、あの時もこんな感じで観客役だったね。珠理奈がスゴクってさ。」
小林香奈と佐藤夏希が顔を見合わせて笑う。
「今度もニューフェイスか…どんどん新しい子が出てくるね…」

選抜メンバーのうちの何名かがステージ上に並んだ。久しぶりの制服を基調とした衣装だ。
センターに花崎、その脇に渡辺麻友、島崎遙香、多田愛佳らが並ぶ。
前田や高橋らは観客席後方にスタンバイした。

軽快なイントロが流れ始めた。まずは花崎のソロパートだ。

ボーカルパートに入った瞬間、観客席全員の動きが止まった。
音楽に合わせて乗らなくてはいけないシーン。それは全員解っていた。
だが…声が出ない。身体が動かない。ただ…ただ花崎の歌声に聞き入った。

圧巻だった。
圧倒的な花崎の歌唱力にその場にいた全員が撮影という事を忘れて聞き入った。

「カーーーット…」声を挟もうとしたADを今回のPVの監督を任された岩井俊司が無言で遮った。
「いいんだ。ワンテイク、このままで…」

「どうだ…お前から見て。」
ワンテイク終了したところで岩井は一旦休憩を入れた。
余りにもメンバーへの衝撃が大きかったと判断しての事だ。
増田に声をかけたのは、いつの間にか姿を見せていた秋元康だった。

「ウチから…ですか?いや…何も言えませんわ。はっきり言うてモノがちゃいますやん。
秋元先生も人が悪いなぁ。ウチがどんだけ打ちのめされてるか解ってて、そないな事聞きますのん?」
「いや…お前だから解ってもらえるのかな?と思ってな。」
「ええ。ありがとうございます。ウチも目が覚めましたわ。もっともっとレッスンせんと…」
増田の目は燃えていた。彼女にとって、初めて現れた好敵手…そう思えた。
「秋元先生…この子は本物ですわ。間違いない。世間のAKBを見る目は間違いなく変わりますわ。
とんでもないインパクトやで、これは…」

「さあ、もう一回…撮影始めます~」
ADの声が響いた。

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