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44.ラストソング


松井咲子のピアノが静かに流れ始める。
桜の木になろうのイントロだ。

一瞬ざわめきが起きたが、すぐにそれはおさまった。
なぜ高橋がこの曲を選んだのか…その意味を知った観客は耳を澄ました。
今日、この曲を歌う高橋みなみの姿を心に焼きつけようとして。


春色の空の下を 君は一人で歩き始めるんだ
いつか見た夢のように 描いてきた長い道


制服と過ぎた日々も 今日の思い出にしまい込んで
新しく生まれ変わる その背中を見守っている


高橋の歌声は弱かった。音程もふらついていた。
いや、歌うというよりも語りかけていた。
そこにいる、全ての人にむかって。


不安そうに振り向く 君が無理に微笑んだとき
頬に落ちた涙は 大人になるためのピリオド

永遠の桜の木になろう そう僕はここから動かないよ
もし君が心の道に迷っても 愛の場所が分かるように
立っている


2コーラス目に入ると、高橋が声を詰まらせた。
息が荒くなる。
大島と前田が肩を支える。
大丈夫、焦らなくていい。声なんか出なくていい。
ちゃんと聞こえてるから。ちゃんと声…聞こえてるから。


「誰もみな胸に押し花のような 決心をどこかに忘れている
思い出して 桜が咲く季節に 僕のことを 『一本の木』を」


咲子の絞ったピアノの音に乗せ、高橋が最後の力を振り絞って歌った。
両隣の前田と大島に笑顔で視線を送る。

永遠の桜の木になろう そう僕はここから動かないよ
もし君が心の道に迷っても 愛の場所が分かるように
立っている



ラストソングが終わった。
白いサイリウムが振られ続ける。
一人の偉大なリーダーを称え続けていた。




その3日後…


「やりたい事やれる…って幸せだなぁ…」
高橋みなみは静かにそう言って微笑んだ。

最期の言葉だった。

45.2年後 | Home | 43.6月9日の奇跡⑦

Comment

作品読みました

感動しました。桜の木になろうを聞きながら読みました。
涙がこぼれてきそうです。
たかみなさんらしい。
まじめであまりにも不器用である、強さ。それが限りなく可愛い。
そんなたかみなを表現できていて素晴らしいです。

2012.01.12 (Thu) | 尾美 利徳 #- | URL | Edit

>>尾美 利徳さん

コメントありがとうございます。
私なりのたかみなの魅力…そんなものが書ければ…と思っていたので、
そうおっしゃって頂けるのはとても嬉しいです。

また、良かったらコメントしてくださいね。
宜しくお願いします。

2012.01.12 (Thu) | 四谷 #mQop/nM. | URL | Edit

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