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32.センターの特権



ステージの袖でイヤフォンから流れてくる音楽に集中していた前田が顔を上げた。
ふと人の気配を感じたからだ。
目の前に渡辺の姿があった。
「ごめんね~ひょっとしてずっとそこにいた?」
「あ…はい。なんか集中してるみたいだから声かけちゃダメかな…って」
「いいよいいよ~大丈夫。どうしたの~?」

「正直、重いです…頂いたバトン…」
「バトン…?重い?」
「ええ。私には前田さんの代わりなんて出来そうにありません…」
「あれ…あの…そっかあ…ダメだなぁ、私。説明下手だよね。
っていうか、説明すらしてなかったか。ごめんね麻友。」
「……?」
渡辺は前田の反応に首をひねった。

「あのね。麻友…アニメ好きでしょ?うーん…こんな例え方でいいのかなぁ?」
「はい…好きですけど。」
「最初、みんなに引かれてたでしょ?あ、ごめんね。ホント私…」
「いえ…本当の事ですから。」
「でも…段々それが麻友の個性って認められてきた。」
「はい…」
渡辺の返事は小さかった。一体何が言いたいんだろう…?

「握手会の時、麻友の列に並ぶ人ってアニメ好きな人が多いじゃない?
あれってアニメが好きだから麻友の列に並んでるんじゃないと思うんだよね。
麻友が好きだからアニメに興味を持った人って多いと思う。」
「そう…だと嬉しいですね。」

「うーん、やっぱ私ってたとえ話が下手だなぁ。
優子とかたかみななら説得力ある話が出来ると思うんだけどなぁ…」
「あの…私…今のままでいいんですか?」
「へ?当たり前じゃん?私、麻友に変わって欲しいなんて思った事ないよ。」
「そうなんですか?」

「あ~そっかぁ、麻友は真面目なんだよね。そうだよね。
あのね…センターに立つ事って実はすっごい楽なの。
自分が周りに合わせる必要がない。周りが自分に合わせてくれる。
一番自分らしい自分でいれるのがセンターに立つ人の特権。」

この言葉には説得力があった。
長くAKBのセンターを守り続けてきた前田にしか言えない言葉だ。

「ね。好きにやりなよ。でも、一つだけ。センターに立つ事。
それはわがままになる事。マイペースを貫く事。
誰かに何かを言われても、簡単に自分を変えちゃダメ。
これって結構辛い事だけどね。アンチ増えるし。」
前田は舌をぺろっと出して笑った。
「そこだけは覚悟して欲しいかな。でも…私は麻友になら出来る…
そう思ってバトンを渡したつもりなんだけどね。」

「はい。ありがとうございます!なんか、すっごく気分が楽になりました。
もっと早く相談すればよかったです…」
渡辺はぺこっと頭を下げた。駆け足でその場を立ち去る。

「あんな感じで良かったかな?」
前田が隠れていた柏木に笑いかける。
「はい…すみません。頼っちゃって…」
「いいんだ。でも、ああは言ったけど、大変だと思うんだ。実際のところ。
きっと、何度も何度も壁にぶつかっちゃうかも。イヤな思いだってするかも。
でも、ゆきりん。いつでも頼ってくれていいからね。
私たち卒業しちゃうけど、会えなくなっちゃう訳じゃないんだから。
もっとね…お互い気軽に頼りあおうよ。だって、仲間でしょ?卒業しても。」
「はい、ありがとうございます。そうですよね。頼っていいんですよね。
私、全部一人で抱え込もうってしてました…」

「さてと…もういいかな?私もやらなきゃいけない事いっぱい。」

前田が顔をくしゃっとして笑った。
参ったな。やっぱ、スゴイ人だったんだ。
今頃気づくなんて…

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