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28.子供の悪戯



眠っているのかな…?声をかけない方がいいのだろうか…
戸賀崎は淹れたばかりのエスプレッソのカップを持ったまま秋元康のデスクの脇に歩み寄った。
そっとカップを置く。
「ん?ああ、ありがとう。」
「すみません。お休みのところを。」

この数カ月の秋元の激務ぶりは常軌を逸していた。
長年一緒に仕事をしてきた戸賀崎も、ここまで何かにとり憑かれたように働く姿を見た事はなかった。

「ようやく…出来たよ。」
秋元はPCからプリントアウトされた一枚の紙を戸賀崎に差し出した。
「これは…」
戸賀崎が秋元の顔を見上げた時、部屋のドアがノックされた。


「失礼します。」
部屋に入って来たのは中谷と大治の二人だ。
「ご苦労さまです。今回はありがとうございました。」
「いえいえ、これが私らの本来の役割ですからな。」
大治がベレー帽を脱ぎながら笑う。
「さて…どうしましょうか?被害届を出すなり、告発するなり…」
「いや。未成年ですよね?きつくお灸をすえて頂いて、
今回は事を荒立てないという方向でいいんじゃないでしょうか?」
中谷の問いかけに秋元が静かに答えた。
「しかし、先生…それでは…」
「ただし、イベントの警備については今後対策を講じることとしよう。
警備人員の増強や会場運営、その他もろもろ。決して窮屈にするという意味ではない。
必要ならきちんとコストをかけようじゃないか。ファンの安全確保は何にもまして大切な事だ。」
秋元の言葉に戸賀崎も納得して頷いた。

「しかし…よく見つけ出しましたね。警察が表立って捜査したわけでもないのに…」
「いえいえ。手掛かりはコレですわ。」
大治がビニール袋に入った一枚の写真を取りだした。
「それは…生写真じゃないですか。ん?懐かしいな。
直筆サイン入りじゃないですか。」

「ええ。爆竹が仕込まれていたトランクの中にはかなりの数のレアものの生写真がありました。このサイン入りの写真もそうです。特に、この大島さんのモノなどはオークションで数十万円の値段がつくそうですが、世にある数が極めて少なく出品される事も稀なものだそうです。」
「そういう話は聞いた事がありますね。」
戸賀崎は渡された写真の裏表を見ながらつぶやいた。

「そのレアな写真が最近一気に数十枚もオークションに出品されて
コレクターの間では相当な話題になっていたようです。」
中谷が携帯の画面を戸賀崎に見せる。
「これ…終了したオークションですが…見てくださいよ、この落札金額。
私たちの生写真にもサインつけましょうかね?」
戸賀崎も秋元も思わず苦笑した。

「なるほどね。ここで落札された写真がトランクの中に揃っていた…と。
でも…誰が落札したかなんて、そこから先は個人情報じゃないですか?
業者も教えてはくれないでしょう?」
「ええ。そこはほら、昔取った杵柄ってヤツですよ。」

なるほど…大治は今でこそ柔和な表情で笑う好々爺といった雰囲気の男だが、かつては機動隊を指揮する本部長や警察署長を歴任してきた男である。引退した今でも、彼の一言で相当数の精鋭が動くと噂されている。恐らくは、色んなコネクションを駆使したのであろう。

「ま…動機は子供の下らん喧嘩ですわ。
誰が高価なおもちゃ持っとるとか、持っとらんとかの。
悪戯にしてはちょっと質が悪いですけどな。」
大治が呆れたような口調で話す。
「しかし…そんな事の良しあしも分からんような子供が、
こんないざこざを起こす原因を作ってしまっとるのも事実です。
我々大人はしっかりと考えてやらんといかんですな。」
中谷の言葉に戸賀崎も頷くしかなかった。

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