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19.誰に向かって?



3月の終わり…

横浜アリーナで2日間のホールコンサートが開催された。
15名の卒業を目前に控えた大規模コンサートという事もあり、大きな注目を集めるものとなった。初日の構成はこれまでと大きく変わる事もなく、現行チームの全体曲と各派生ユニット、SKE、NMBといった地方グループ、そして終盤はヒットメドレーという昨年行われた西武ドームと似たような内容だった。

コンサートの出来そのものは、悪くないように見えた。
やる気は漲っていたし、いつも以上に激しいパフォーマンスと志向を凝らしたMCなど、随所に工夫が見られた。しかし…初日を終えた反省会で秋元の口からは辛辣な評価が放たれた。

「君たち、今日はどこを向いてステージの上でパフォーマンスをしていたのか。一人ひとりよく考えて欲しい。実に頑張っていたと思う。ダンスも悪くなかった。MCも事前に相当詰めていたんだろうね。お客さんの反応も悪くなかったと思う。でも…何かが違う…そう思ったのは私だけではないはずだ。それは…君たちが一体どこを向いていたか…それが透けて見えたんだと思う。君たちがその力を誇示しなくてはいけないのは…誰なのか。誰の為に…誰に喜んで頂くのが一番なのか…もう一度良く考えてみなさい。いいね。」
「はい!」
全員が声を揃えた。しかし…明らかに心は揃っていなかった。
秋元は敢えてそれには触れず、その場を立ち去った。


「たかみなさん…」
島田が高橋に助けを求めるような表情を向けた。
高橋は静かに微笑んで、その場に座り込んだ。何も言葉を発する事なく。
今までなら、真っ先に集合をかけて声をかけたはずだ。
「みんな。ちょっと集まってや。」
大きな声をかけたのは大家だった。バラバラとその場を離れ始めたメンバーが集まってくる。
島田も山内も大場も…不満そうな表情だが大家の呼びかけに応えた。
「なあ、秋元先生の言葉を良く考えてみような。
きっとな、ウチらを鼓舞しようと思っておられると。もっと出来るはず。そう思っとるとよ。」
大家の言葉に一部のメンバーが頷く。


いや…そうじゃないような気がする。ただ単に意味もなく、あんな風に言う人じゃないはずだ。
今までもそうだったはず。正直、私には理解できない事もあった。
でも、それじゃダメなんだ。先生が何を言おうとして、何を求めているのか…
それがたかみなさんにはわかってたんだ。きっと、今も。
でも、何も言わないのは…それに気付け…って言ってくれてるんだ…


「すいません…いいですか?」
島田が手を挙げて立ちあがった。
「何?わかったような発言は止めてよね?」
宮崎が島田を揶揄するような言葉をぶつける。
「アンタね…」
立ちあがろうとした山内を押さえて島田が話始めた。

「すいません…私…わからないんです。なんで先生があんな風に言ったか。
でも…確かに私もコンサートの間ずっと思っていました。
MCで話してても、この話題って受けてるのか?
歌ってても踊ってても、お客さんに届いてるのかって。みんなはどうでしたか?」

島田の言葉に、騒がしかった輪がしんとなった。
みんなが考えていた。

「確かにね…会場の大きさのせい?いや、違うな。もっと大きな場所でも私たちはやってきた。
でも…ね、西武ドームの時と今 回と…何が違ったんだろ?」
高城亜樹が沈黙を破った。それを機に、一斉に各自が意見を言い始めた。

「それはやっぱり…たかみなさん達が卒業する事で、
これからは私たちが頑張らないと…って思いが強かったから…」
「でも、もっちー、それって悪い事じゃないんじゃない?」
「そうそう、はーちゃんの言う通り。」
「でも、それが強すぎて一人よがりになってなかったかなぁ?」
「亜美菜ちゃん、一人よがりってどういう事?キャラを出す事は悪い事じゃないでしょ?
いつも言われてたし。もっとアピールしなくちゃって…」

「あのぉ…それって誰へアピールしてたんですかぁ?」
「そんなの決まってるじゃない、みおりん。アンタだってお客さんに…」
北原がそこまで言いかけて言葉を飲み込んだ。
他のメンバーも何かに気付いたように息をのむ。

「優子…ちょっといいかな?先上がるわ。」
「うん。わかった。大丈夫だよ。きっと、あいつ等わかってる。」
「そうだね。わかってるよね。じゃ、また明日。」
「うん。お疲れ様。」

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