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11.戸賀崎の卒業


もともと忙しいのには慣れている。睡眠時間なんて3時間あれば足りる。
年をとってきたという自覚は全くなかった。
いや、むしろ年々体力が増してる気さえしていた。

15名の卒業を決心してからというもの、秋元康の多忙さには一層拍車がかかっいた。6月9日は卒業するメンバーだけでなく、AKBグループ全体にとっても新しいスタートの日になる。東京ドーム公演は高橋や大島だけでなく秋元にも大事なものであった。その日に向け自分の全てを注ぎ込む。そう決めた秋元は動いた。とにかくアグレッシヴに動いた。いや、動いたというよりは、高橋の熱意が秋元も動かしていた。まるで熱病に侵されたかのような熱さだった。

「先生。このところ、殆どお休みを取られてませんでしょう?
もうお年なんですから気をつけて頂かないと。」
戸賀崎が秋元にコーヒーカップを差し出し言う。

「いや・・・むしろ今は30代の時よりも気力が充実しているからね。
それに…この程度でネを上げていては高橋…いや、彼女たちに申し訳がたたないよ。
君だって大変だろう。一番神経の使う役回りをしてるんだから。」
AKBのメンバーは大手の芸能プロダクションに在籍している者が多い。東京ドームのイベントを最優先事項とする秋元の意向を受け、各事務所の思惑と反する事になるケースも決して少なくない。戸賀崎の仕事の多くはその調整事であった。時には相手をなだめ、時には頭を下げ丁寧に交渉にあたった。

「大丈夫ですよ。一番頑張ってるあいつ等に比べてたら…」
「そうだな。それに本当に苦労してるなら、もっと痩せてるだろうしな。」
秋元は冗談っぽく笑った。

わかっている。戸賀崎はこの6年、全てをAKBに捧げてくれたと言ってもいい。不器用だし無骨で寝技が苦手だが、ずっとメンバーと自分、そしてファンとメンバーの間に入って地道に仕事をしてくれた…

秋元は自分の机の一番上の引出しを開けた。
一通の封筒が目に入る。戸賀崎から受け取った辞表だ。


6月9日…その日は、彼にとってもAKBを卒業する日となる。

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