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4.早春の土手



思ったよりも忙しいって実感はなかった。
分刻みのスケジュールは今に始まった事じゃないし。
正月気分なんてなかったのは去年も同じだし…

日差しが暖かい日だった。
珍しく冷たい北風もない。

高橋みなみは一人、荒川の土手に寝転がっていた。
目をつぶっても瞼の裏に太陽の光が残ってる。
小春日和っていうんだっけ?こういう日の事を。

鳥のさえずりが聞こえてくる。
あの時もここに来て鳥のさえずりを聞いていたっけ。

12月に始まった劇場公演。
全然お客さんが入ってくれなかった。
歌えない…踊れない…MCでも喋れない…
辞めようなんて思った事はなかった。
でも、辛かった。どうすれば認めてもらえるんだろう?
そればっかり考えていた。
何でもやった。人が全然いない街頭の、ステージもないところで歌った。
みんなでビラ配りもした。頭ばっかり下げてたっけなあ。


あれから6年。
何もかもが上手くいっている。

ミリオンセラー?紅白?レコード大賞?
誰がそんなことまで想像したの?
ガラガラの劇場でたどたどしく歌って踊ってた私達が?

上手くいきすぎてる?そんな事はないよね。
だって…みんな頑張ってるもん。努力は絶対に報われるんだ。
それを…一生をかけて証明する…そう言ったじゃんか。
まだまだだよ。私の夢はこんなトコで終わりじゃないよね。

背中についた芝生を払う事もせず、立ちあがった。
んーーーーーーーんっっと。
さ、今日は秋元先生の呼び出しがかかってるんだ。

手に持っていた一枚の紙に一瞬目をやる。
両手でそれを破ろうとして…やめた。
強く握ってくしゃくしゃになったその紙を静かに鞄にしまった。

5.卒業コンサート | Home | 3.紅白直前②

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