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33.導火線


「ねぇ…この際、誰が選抜とかなんとかって関係なくない?」
沈黙を破るように言ったのは前田敦子だった。
こういう時に何かを切り出すタイプではない。高橋も大島も篠田も…
みんな一様に驚いたような顔を前田の方へ向けた。

「私なりに考えてみたんだけど…さっきまでは、私たち生きる事を一生懸命考えてたよね。
みんなで助け合って。
私だって一生懸命働いた。手だってこんななっちゃったし日焼けもしちゃったし。
でも…すごく不安で怖くてこれからどうなるんだろうってずーっと思ってたけど…。
あのね…選抜とか…選らばれるのってそんな大事な事かなあ?
今一番大事なのはみんなで生きて帰る事じゃないのかな?」

「そうだよ。あっちゃんの言うとおりだよ。
あんな怪しい人たちに振り回されて、またいがみ合ったりするのってイヤだよね。
さっき言ってたじゃん。クイーンって女が。ゲームが終わった時の順位で選抜決めるって。
って事はいつかは解らないけどゲームは終わるんだよ。
良かったじゃん。遭難してたら帰れるかすらわからなかったんだから
。あの人たちの企みだってわかったんだから。
とにかく、ゲームが終わるまではまたみんなで一緒にがんばろうよ。ね?」

前田の隣で立ちあがった大島優子がみんなに語りかける。
高橋も力強く頷きながら大島の背に手を回す。

「さすがですね~。センター様やエース様、キャプテン様は考え方が健全でいらしゃる。
でも、ホントにそう思ってる人ばっかですかね~」

後ろから声がかかる。ちょっと鼻にかかったような特徴のある声だ。

「まゆゆ!生きてたの!」
「ゆきりんも。どこ行ってたの?良かった。心配してたんだよ~」
菊地や平嶋、高城、倉持が立ちあがって二人の方へ駆け寄る。
渡辺麻友と柏木由紀は軽く微笑みを返し、まっすぐに大島や前田の方に歩み寄る。

「どうも。皆さん、お元気そうで何よりですね。」
「麻友…ゆきりんも。良かったよ、無事で。でも…」
大島が何か言おうとしたが、渡辺は小さく鼻で笑ってそれを遮った。
みんなの方を向いて話し始める。

「みなさん。よ~く考えてみませんか?このまま、この人たちの言う通り仲良しこよしで終わったら…
日本に帰ったら、また選抜メンバーはおんなじですよ~そりゃ、何人かは落ちちゃいましたけどね~。」

それまで黙ってた柏木も渡辺の横に立ち言葉を添える。
「なっちゃん?今回もまたアンダー?日本を発つとき何位だっけ?
28位?今回も26位狙ってるとか?それでいいの?
あやりん、せっかくのチャンスなのに。また普通の選ばれ方になったら、こんなチャンスってまた来るのかな?」

「ちょっと!麻友!ゆきりん!こんな時に何を言ってるの!」
高橋が二人に掴みかからんばかりの勢いで叫ぶ。

「こんな時だから言ってるんですよ。」
渡辺が笑う。冷ややかな笑顔だ。

「ほらね…たかみなさん。怒ってる顔してるの…どれだけいるか良く見てみた方がいいですよ。
これはゲームなんでしょ?ま…みなさんのように変化を求めない方もいるでしょうし。
どっちにしてももうすぐ日が暮れます。今夜はゆっくりそれぞれ考えるって事にしましょうか?
あ…スマホありがとうございます。」
柏木が怒りに震える高橋の手からスマホを奪い取るように受け取った。

「え~たぶん、このゲーム。一人っきりじゃ戦えない…そんな風に私たちは読んでいます。
ユニットの機能がチームに変わった…
下位のみなさん、もし、私たちにつきたいって思う人がいたら…いつでも相談に乗りますよ。
遠慮なくお越しください。そう遠くない場所にいますので。」
渡辺が笑いながら手を振った。
柏木と手を繋いでその場を去る。

鬼の形相で二人の背を睨みつける大島や高橋。
その一方であちこちで顔を見合わせ小さく頷く者。

「ヤバいな…あの二人…導火線に火をつけていきやがった…」
篠田が小さくつぶやいた。

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