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29.釣り師と猟師


数日が過ぎた。

時間が経つにつれ絶望的な情報ばかりが集まってくる。
一番メンバーを悲観させたのは、どうやらここが人の気配がまったくない場所だという事だ。かなりの範囲を探索したが人が立ち入った気配と言うものが全くなかった。ビーチは美しく景観は素晴らしかった。天候も熱帯雨林のジメジメしたものではなく、ハワイを思わせる爽快さだ。もし、人の手が入っている場所なら間違いなく何らかの開発が施されるロケーションなのに、まったく手つかずでいる事がここが見落とされた地である事の何よりの証拠だった。この数日の間、上空を飛ぶ飛行機も沖合を通る船の姿も全くなかった。

唯一の明るい話題は食糧の確保が出来始めた事だ。
食糧班の仕事を与えられた須田明香里がヘアピンの釣り針、木の枝の竿、弦の糸で作った釣り竿で次々と釣り上げる魚が重要なタンパク源となった。

「あかりん、天才だね!スゴイね。大漁だよ~」
「あ、でも…多分ここの魚ってスレてないんだと思うんですよ。
釣られ慣れてないから簡単に釣れるんですよ。」
「でも、やっぱり腕だよ。おんなじ道具使ってるのに、私全然釣れないもん。」
「大丈夫。ちょっとしたコツですから。はるきゃんさんもすぐに釣れるようになりますよ。」
「ねえ、そのはるきゃんさんっていうのやめない?
こんな場所なんだし、それに幾ら先輩って言っても私のほうが年下なんだし。」
「そうですね…あ。違った、そうだね。いいの?はるきゃん。」
「うん。全然OK~。ね、日本に戻っても仲良くしてね?」
「もちろん!」

「ほら、竿がぴくぴくってなってる。今だよ!ぐっとしゃくるように竿を上げて…」
「わぁ!釣れた!釣れたよ!あかりん!」
「やった!大丈夫、全然センスあるよ、はるきゃん!」

二人の笑い声が響いた。


一方で同じ食糧班の高柳明音が仕掛けた罠で野鳥を確保できるようになった。
気の革と弦で編んだ籠をカニなどの餌の上に置くだけのシンプルなものだったが、やはり人慣れしていないのか、魚程ではないものの食糧として確保できるようになっていた。

「でも、よくわかるよね~野鳥ってそんな多く飛んでるわけじゃないのに。
ちゅりが仕掛けるトコにわざわざ寄ってきてるみたい。」
「いやいや、何となくこの辺りかなって閃くんだよね。」
「ほら…また来た…しーっ…やった!一度に2羽だよ!美味そうな鳥だなぁ。
丸々と肥えてて。私みたい。」
「はるぅ…そんな自虐ネタはいいからさ。」
「あはは、なんか嬉しくってさ。」
「そろそろ戻ろうか。」
島田晴香と高柳は手を今日捕れた獲物を下げて手を繋いで居住エリアへ歩いていった。


昼間はそれぞれの仕事に精を出しているおかげで気にならない…いや、気にしないようにしてはいたが、夜になるとやはり心の中は不安と絶望で支配されてしまう。このままここにいつまで居なくてはいけないのだろうか?ひょっとしたら、一生このまま…誰も口にしなかったが、誰もが考えていた事だった。非現実的な日常が現実的に受け止められ始めるにつれ、その不安は大きなものとなってみんなの事を押しつぶそうとし始めていた。


そんなある日だった。
突然、道が開かれたのは。

誰もがそこに希望を見出した。
それが、悪魔の用意した、甘美だが残酷な罠だとは誰も気づくことなく…

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