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トップと7分弱。絶望的とも思える差に向かって山本は走りだしていた。
学連選抜が10位までに入れば、翌年のシード枠は一つ減り、予選会からの出場校が1校増える事になる。むしろ、これまでの学連選抜のモチベーションはそちらに向けられる事が多かった。しかし、今年は違う。アクシデントがあったとはいえ、ここまで優勝争いの一角に食い込んできた。ウチがその炎を消すわけにはいかんのや。山本の顔には決意の表情が浮かんでいた。

山本はこの箱根に出場している選手の中では異色の存在だ。
陸連登録はしているものの、母校の難波商大での所属は陸上部ではない。
難波商大は男女ともにトライアスロンの強豪校だ。山本は3年生にして、そのエースとして学生タイトルを総なめにするトライアスロン界のホープとしてその名を轟かせていた。
山本の特色は圧倒的なランの強さだ。もちろん、スイムもバイクもトップクラスのタイムを誇っていたが2種目を終えた後の10キロランを30分台前半で走る脚力が陸連の目にとまっての選抜選出だった。

山本には夢があった。いつかはロングのトライアスロンに挑戦したい。そして、最高峰と言われるアイアンマンハワイへ出場する…それが山本の夢であり、目標だ。
最初、駅伝への出場の話を同じ大学の陸上部の渡辺美優紀に持ちかけられた時は、正直全く関心がなかった。しかし、後学の為にと観戦に行った関西地区の駅伝大会で山本はちょっとした衝撃を受けた。フィニッシュする選手たちの表情だ。
トライアスロンは孤独な競技だ。ロングの競技ともなると、10時間以上も身体を動かし続ける事になる。しかし、どこか一体感を常に感じる事が出来るのも、この競技の不思議なところだ。アイアンマンハワイではトップでフィニッシュした選手が最後に帰ってくる選手を出迎えるという素敵な習慣がある。同じ舞台で戦った選手がお互いの健闘を心からたたえ合う。それがトライアスロンだ。陸上競技にはそういう世界を感じなかった。しかし…初めてみた駅伝には何か通じるものを感じた。

今ウチは一人で走ってる。でも…なんやろ?この感覚は。
背中が押される。すごい力や。きっとこれは、これまでに走ってきたみんなの思いやな。
脚がどんどん前に出る。これは、そうやな…珠理奈が引っ張っとるんや。はよ来いって。
はよ走りたいんや。分かる…わかるで。

誰かが待ってくれてる場所に走ってく。そうやな、アイアンマンのフィニッシュもこんな感じなんやろうか。
待ってくれてるのが仲間ちゅうのがまた最高やな。
駅伝か…みるきーに頼んでみようかな。ライシーズンはウチも仲間に入れてくれんかって。
怒られるかな。安易やって。

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