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復路は往路のゴール順に時差スタートしていく。
8時ちょうど。トップの秋英がスタートする。5秒後に学連選抜、さらにその37秒後に慶育の順でスタートしていく。秋英は6区に倉持を持ってきた。パワフルな走りをするランナーだ。中距離にも強くスピードもある。慶育の板野も小柄だがアグレッシブな走りに定評がある。この4年間、秋英のカルテットに匹敵する実績を誇ってきた。どちらも山下りは初めてだが、スピードがある選手だ。

号砲が鳴る。
倉持が勢いよくスタートしていった。5秒後、須田の目の前で係員の小旗が振り下ろされる。
須田も不安を振りはらうように復路へ駈け出していった。100メートル程で道路を左折する。
まずは5キロ程登りが続く。

倉持さん…速い…見てて分かる。どんどん背中が遠くなっている気がする。
私は…ダメだ。まだ緊張してるのかな?身体が…いや、そんな事はない。
ちゃんと身体は動いてる。腕も振れてる、脚も軽い。
私が遅い?いや違う。そうか…倉持さんが速いんだ。じゃ、焦っても仕方ないかな。

すぐに落ち着いた表情になった須田を見て、戸賀崎は伴走車の中で一人頷いた。
いいぞ、それでいい。まだお前の場所はここじゃない。

2キロ地点、箱根神社の鳥居を通過するときには、すぐ後ろに板野が追いついてきた。
2キロで30秒詰められた事になる。一方で先を行く倉持との差は40秒に広がっていた。

「亜香里先輩。落ち着いてるな。でも…大丈夫かな?さすがにこのメンバーの中じゃ…」
珠理奈は9区の中継所近くの待機所に入っていた。ストレッチをしながら視線をテレビに向ける。昨夜は興奮でなかなか寝付けなかった。こんな事今までなかったのに…そう思って飲物を買いにホテルのロビーに降りると木本と市川に捕まった。30分程二人のバカ話に付き合ってるうちに自然と眠くなりその後は熟睡だった。ひょっとして緊張してる?私…

5キロ手前、国道1号の最高点を過ぎたあたりでは、須田は3位に落ちていた。
先頭の倉持とは2分、板野との差もすでに1分がつこうとしていた。

ちょっと離されすぎだ…
誰もがそう思い始めていた。走ってる須田自身も。
ただ一人、戸賀崎を除いて。

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