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雪は明け方までに上がっていた。
夜半には勢いは弱まったものの、芦ノ湖周辺では20センチ以上の積雪となった。
6区の道路状況が心配されたが、夜を徹しての除雪作業のおかげで午前7時、
予定通り8時のスタートが発表された。

往路を秋英大が制した事で、総合4連覇の可能性が極めて高くなったと今朝の新聞はこぞって伝えていた。篠田、小嶋という2人のトップランナーを復路に残した秋英の体制に死角なし…という論調だ。それを慶育がどこまで肉薄できるか…また、学連選抜には往路の快進撃をどこまでつなげるかといった、ダークホース的な扱いが与えられていた。

切り裂くような空気がスタート地点に広がった。
氷点下に冷え込んだせいだけではない。各選手の緊張感がその場の空気を引き締めていた。

須田亜香里はスタートチェックを受けながら強い居心地の悪さを感じていた。
秋英は倉持明日香、慶育は板野友美。聖ヴィーナスも昨年区間賞の渡辺ではないものの、
これも実力者の河西智美。言わずとしれた学生長距離界の有名選手ばかりだ。

私なんかが、ここにいていいのかな?
しかも、2番目に出て行くんだよ。どうしよう…全員に抜かれちゃったりしたら…
っていうか、もうドキドキして心拍MAXなんだけど…

その時、戸賀崎が須田の背中を軽く叩いた。
「おい、須田。思う存分ビビってみろ。めったにないぞ。こんなプレッシャー。」

ビビってみろって…そっか。そうだよね。この中で私が一番遅いのはもう変えようがない事実だもんね。
確かに、選抜に選ばれなかったら…6区にエントリーされなかったら味わえないよね。
よし…じゃ、ビビってみますか、思いっきり。

須田が戸賀崎に笑顔を返す。
「秋英大、スタート5分前です。」
静寂が破られようとしていた。

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