スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

52


小涌園の何重にも取り囲んだ声援、恵明学園の子供たちの応援。
通り過ぎるたびに分かる。私が通過すると、すぐに沿道の視線が後ろに向けられる。
そろそろかな。島田は感じていた。
国道1号線の最高点。その手前でそれまでのつづら折りの道が終わり視界が広がる。
島田晴香は最後まで後ろを振り返らなかった。
来た…間違いない…
「島田、お待たせってトコだ。来たぞ。しかも2人だ。」
戸賀崎から声がかかる。

2人?増田さんも?
いや…違うな。そっか、指原さんか。島田は直感した。
もう登りは終わる。残り5キロ。下りの勝負か。しんどいな…
しかし、5分…追いつかれちゃうか。ホントに。でも、そんな事言ってても仕方ないな。
ここからが私のレースだ。


18キロ。
ずっと一緒に山を登ってきた。
去年のタイムより…2分も早い。驚異的だ。ホントこの人はスゴイ。
あれ?でも、それに食いついてる私もスゴイって事?
もう登りも終わりだ…

う~ん…一度くらい前に出なくちゃいけないんじゃないだろうか?
このままだと、「やっぱり指原はヘタレだ。すっと大島に山を牽いてもらってた。」
なんて言われちゃう。まあ、ヘタレなのは事実だから仕方ないんだけど…
よし…
行っちゃうか。どうせついてくるんでしょ?
指原が最後の登りでピッチを上げた。
大島はすぐ指原の後ろについた。

突風。


視界の開けた坂を駆け下りるように強い向かい風が突き刺さってきた。
指原は前傾を強くして歯を食いしばる。
そっか…この風。
これが来るって分かってるから私を前に行かせたんだ。
しまったなぁ。さすが4年続けて登ってるだけありますね。

指原は後ろを振り向いた。
あれ?いない…
大島が遅れていた。5メートル?6メートル?
指原はあっけにとられた。

「指原ぁあぁぁああぁ!行っけええぇええぇえ!」
今日初めて高橋の大きな声が伴走車からかかった。

ここでですか?
無理です無理です無理です無理です無理です無理です無理です無理です無理です…
たかみなさん、怒らないでくださ…
え?怒られてるんじゃない。そうだ。今だ、今しかない。ここで出るんだ。

勝てる…大島優子に…勝てる。
指原は前を向いた。
すぐ手の届くところに島田晴香の背中があった。

53 | Home | 51

Comment

Post comment

Secret

Page top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。