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通り過ぎたところからどよめきが起きる。明らかにスピードが違う。
前田が涼しい顔で通り過ぎると、一陣の風が巻き起こったかのようだ。
「あっちゃん、行っちゃえ!どんどん行っちゃえ!」
伴走車から高橋の声がかかる。前田は軽く右手を上げてその声に応える。

特に意識をしていた訳ではない。組まれたトレーニングプログラムの通り練習し、レースでも指示のあった通りに走った。
すると走るたびに記録が伸びた。
いつの間にか、学生No.1と呼ばれ、いつの間にか若手長距離界のエースと呼ばれるようになっていた。
特に一番になろうって思って走ってた訳じゃない。

でも、今回は違う。
みなみの為に走ろう。

エントリーが発表された日の高橋の涙が前田を突き動かしていた。
前田は高橋に言った。
「もっとわがまま言ってもいいんじゃない?みなみには、それが許されると思うよ。」
「わがまま言ったよ。私、実は逃げたんだ。私のせいで優勝出来なかったなんて言われたくなくてさ。だから外してもらったんだ。」
高橋は下をペロッと出して笑った。目は真っ赤だった。

嘘だ。みなみ…アンタはキャプテンじゃなかったら、絶対走ってるはずだ。
一番走りたかったのはアンタのはずだ。
「みなみ…私はアンタの為に走るよ。」
前田は高橋に聞こえない声で呟いた。

3人…4人…5人…また前に2人のランナーが見えた。
あれで何人目だろう?もう数えるのはやめた。私はただまっすぐ前に進めばいい。
みなみが「行け」って言ってるんだ。大丈夫。もっと行ける。

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