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2月10日 東京大手町

曇天の空が今にも泣きだしそうだった。
雨…いや、この気温じゃ雪…か。戸賀崎は手もとの携帯に表示された天気予報を見て一人微笑んでいた。
今日の午後から本格的な雪が降るらしい。

午前7時に発表された最終のエントリー変更で、戸賀崎の予想が2つ覆された。
聖ヴィーナスの1区に渡辺麻友がエントリーされたことがその一つだ。
例年だと1区は各校様子見の為、終盤まで団子状態になる事が多い。戸賀崎はその中で有力校を撹乱するべく木本を送り込んだのだ。ただ、渡辺は予想外だった。1区にエントリーしている全選手の中で明らかに突出した力を持っている。しかも、聖ヴィーナスは往路に有力選手をずらりと並べてきた。間違いなく最初から飛び出してくる作戦だ。

1区が荒れる…
しかし、それは戸賀崎が望んでいた展開だった。

もう一つの予想外は、秋英の高橋がエントリーから外れた事だ。
故障を抱えている事は聞いていた。しかし、本番に向け復調しているとの情報も入ってきていた。復路に投入するのか?とも思ったが、どうやら高橋は秋元総監督に変わって伴走車に乗り込むらしい。という事はこの大会はもう「走らない」という事だ。
戸賀崎はやっかいだな…と思った。秋英なら高橋が走らなくても、そんなに大きな戦力ダウンはないだろう。学生ランク7位の高橋の欠場は他のチームなら大きな痛手だが、秋英に関しては他が十分カバーできる戦力がある。それよりも高橋が伴走車に乗って選手に声をかけれる…そっちの方が戸賀崎には怖かった。あの子の言葉には、不思議と人を奮い立たせる力がある…案外スター軍団の秋英にとって、チームをまとめる一番のポジションに高橋を据えたのかもしれない…

「監督~。言われた通り、好きに走っていいんですよね?」
木本が戸賀崎の横でぴょんぴょん飛び跳ねながら聞く。
身体をあっためているというよりは、早く走りだしたくてうずうずしてるという感じだ。
「ああ。構わないよ。というよりは、みんなをびっくりさせてこいよ。」
「は~い。わかりました。じゃ、行ってきます!」

本当か嘘か、木本は「緊張した事がない」そうだ。
今も、こんな大きな舞台を前に全く物怖じしていない。1年生の木本を1区に起用したのもそんな彼女の性格を買ったからだ。戸賀崎は木本が最終点呼に呼ばれるのを見届けて伴走車の方へ向かった。

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