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2月1日

箱根まであと10日。
学連選抜は大会前最後の全体練習の為、四ツ谷大グラウンドで汗を流した。
ここにきて全員の調子も上がってきている。戸賀崎は微かな手ごたえを感じていた。

「じゃあ、区間エントリーを発表するぞ。」
練習後のミーティングで戸賀崎が切り出した。
待ってました。全員が戸賀崎の方を向く。
どうやら、いい感じで気合いが乗ってきているようだ。

「1区、木本花音。2区、矢神久美。」
2区で矢神の名前呼ばれると、メンバーからどよめきが起きた。矢神も戸惑った表情だ。
戸賀崎は間を置かす発表を続けた。
「3区、市川美織。4区、大場美奈。5区、島田晴香。山は島田に登ってもらう。」
島田が目を丸くしている。私が山を登る?
「え~…それぞれの起用の狙いを理由を言いたいところだが復路も発表しちゃうぞ。
待ちきれんって顔が並んでるからな。」
戸賀崎はそう言って手もとの資料に目を落とした。
「6区、須田亜香里。7区、松井玲奈。8区、山本彩、9区、松井珠理奈。10区、高柳明音。」

発表を終えると、微妙な沈黙が場を包んだ。
選ばれた者、選ばれなかった者。もちろん、その気遣いから来るものもあった。
「すみません。監督。それぞれが選ばれた理由っていうか…
監督の狙いを教えてもらえませんか?」
それだ…全員が聞きたい事を主将の高柳が立ちあがって戸賀崎に聞いた。

「そうだな…なぁ、俺が優勝を狙うってぶちあげたのは…無謀だと思うか?」
「え…いえ、それは…もちろん出るからには少しでも上を目指して走りたいですけど…」
質問したつもりが逆にそう聞かれて高柳は答えに詰まった。
「まあ、普通は厳しいって思うわな。だから、俺は色んな仕掛けをこのラインナップに盛り込んだ。奇襲って言ってもいいかもしれんな。それぞれのメンバーは自分に仕掛けられたものが何なのかよくわかった上で走って欲しい。まず…木本。」
「は…はい。」
木本が立ちあがった。いつもの笑顔だ。
「お前は好きなように走れ。いいか。好きな・ように・だぞ?周りは関係ない。
自分が楽しいと思えるような走りをすればいい。それが俺のお前に期待するただ一つの事だ。逆に3区の市川。お前に与えるテーマはガマンだ。いいか、俺が伴走車から合図するまでひたすらガマンしろ。ただし、Goが出たらそっからは糸の切れた凧になっても構わん。」
戸賀崎の言葉を聞いて、木本と市川は頷いた。もっと細かい指示が出るものと思っていたのか、ちょっと拍子抜けした表情だ。

「矢神。わかってると思うが、2区は各校のエースが集結する。お前は…前にいる誰かを照準にしろ。
誰でもいい。出来れば柏木とか前田がいいな。」
「照準って…前田さんや柏木さんについて行けって事ですか?そんな。私には無理です。」
「無理だと思ったらいいよ。他の選手でも構わん。でもな、矢神。せっかくだから挑みかかってみろよ。
お前はもっと自信をもっていい選手だ。俺はそう思ってるよ。」

戸賀崎の話を聞きながら、珠理奈は一人考えていた。
なるほど…この人は本気でこの箱根で何かを起こそうとしている。
一つ一つのパーツを組合わせると…確かにこのオーダーは的確だ。
ただ、幾つかわからない事がある。亜香里さんの6区と玲奈さんの7区だ。
ま、このあと話しがあるだろう…

珠理奈はそう考えながら突然はっとした。
今まで駅伝のレースの前にチームがどうなるとか、戦略がどうだとか考えた事があったっけ?…ない。自分は任せられた区間をどう走るか…それだけじゃない。駅伝なんて。もちろん、今回もそのつもりだ。元から母校の名誉とかそんな事には全然興味はない。でも、今は…なんでだろう。頭の中に他のメンバーが走ってる姿が思い浮かんでくる。

なぜだろう…私、ワクワクしてる。

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