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合宿での最後のメニューは25km走だ。一応個人レースとして行う。
故障明けの島田以外、全員がスタートラインに立った。

「どう予想しますか?」
伴走車のハンドルを握る戸賀崎に助手席から島田が話しかける。
「そうだな…まぁ、珠理奈が行くんだろうな。調子はずっといいみたいだしな。
玲奈がもう一つタイム上がってきてないから独走…かな。ま、誰が途中までついていくか…」
「なんか、ありきたりな予想ですね。でも、そうなっちゃうんでしょうね。」
「でも、今日はレースじゃない。みんなには、よく考えて走るようにって言ってあるからな。」

仲俣の笛の合図で選手がスタートした。
トラックを1周、そして一般道へ出ていく。観光シーズンでもないこの時期は交通量も少なく一応警察への届けも出しているが極力安全に走らないといけない。集団というよりは縦長の隊列のようになって一団は海岸沿いの道を走った。

5キロ過ぎで早くも珠理奈が飛び出した。ついて行ったのは、玲奈、高柳、大場、山本、そして矢神だった。

「お、矢神もついたか。」
戸賀崎は予選会で失速した矢神をあえてこの選抜に召集した。元々力のある選手だと知っている。予選会で負けた学校はほぼシーズンオフモードに入る。もちろん個人のロードレースはこれからがシーズンだが、駅伝への出場機会は無くなってしまうだろう。矢神が取り戻さなくてはいけないものは、駅伝の中でしかない…そう思ったからだ。


12キロ過ぎで海岸線に別れを告げ、ルートは登り坂に入る。
約5キロに渡って結構きつい登りが続く。箱根の6区とは比べようがないが、それなりに登りの特性が求められる区間だ。
実は、珠理奈は登りをそれほど得意としていなかった。今時点での唯一のウィークポイントといってもいい。といっても、平地の走力と比べて…という意味でだ。6人の先頭をずっと譲ることなく走ってる。さすがに表情が苦しくなった。
その時、一人の選手がすっと珠理奈を右側からかわしていった。
難波商大の山本だ。

山本は合宿の中でもこれまで比較的目立つ事のない選手であった。10000の持ちタイムでは上位にいながらも特に存在感を出す事が出来ないでいた。渡辺と二人だけ関西からの収集という事で遠慮してたのかもしれない。

「山本…今日を狙ってたな。あの顔はそういう顔だよ。アイツらしいな。」
「らしいって?監督、前から山本さんの事も知ってたんですか?」
「あたりまえじゃないか。俺がろくに調べもせずに選手選んだなんて思ってるんだろ?」
「はい。」
島田は笑った。なんとなく戸賀崎が可愛く見えたからだ。
きっと、色々調べたんだろうな。やっぱ、私たちはいい指導者に恵まれたみたいだ。


坂の上までに山本がちょっと差をつけた。それでも珠理奈は食い下がっていく。
10秒差…といったところだ。逆に玲奈が遅れた。やはり調子がいま一つのようだ。
高柳、大場、やや遅れて玲奈が下りに入る。

「おい、車を止めてくれ。」
戸賀崎は車を降りて、ラゲッジスペースに積んでいたミニベロに乗り換える。
「下りきったところで待っていてくれ。ちょっと見たいものがあるんでな。」
戸賀崎は後方の集団を待った。
一番後ろを走っていた、秦、島崎、須田のグループが来るとミニベロにまたがった。

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