スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

15


11月17日 筑波山風返し峠




たかみなさんって絶対鬼だ。それか筋金入りのサドだ。
じゃなきゃ、ここまで厳しい事を言える訳がない。


まだ明けきらない筑波山の山道を駆け上がりながら指原は思っていた。
後ろにはコーチカーがぴったりつけていた。助手席からは高橋が大きな声でハッパをかける。
ちょっとでもペースが落ちようなものなら、途端に罵声が飛んでくる。

大体、私はにはこの時期に山岳トレする必要なんてないはずだ。
どうせ、今年も箱根を走ったとしても、3区か7区…繋ぎの区間なんだ。

そもそも私がこんな名門で走ってるなんて事が間違いなんだ。
そりゃ、大分じゃ結構有名な選手だった。高校駅伝だって2回出たし、花の1区で区間4位になった事もある。でも、前田さんや篠田さん、たかみなさんを見れるかもって記念に受けたセレクションでまさか受かっちゃうなんて。この名門のユニフォームを着る事になるなんて。夢にも思ってなかった。

毎日毎日学校を辞める事しか考えていなかった。周りは高校時代から全国レベルで有名な選手ばっかり。瞬発力がある訳でもないし、持久力がある訳でもない。筋トレだって苦手だし、インターバルトレーニングなんて毎回苦しくて泣いてた。

それなのに、補欠登録されていた2年生だった去年の箱根を急遽当日のエントリー変更で走る事になった。7区を無我夢中で走ってたら、いつの間にか襷を次の選手に渡してた。区間新記録で区間賞。

訳がわからない。今年に入って10000mで学生ランキング9位に入った。なんで私が?
今もここで立ち止まって泣きだしちゃえばどれだけ楽になれるか。
「やだ―――っ」って大声を上げて逃げだせばどれだけすっとするか…


「指原さん、また泣いてますよ。」
後部座席から多田が前に身を乗り出しながら声をかける。
「愛ちゃん、よくわかるね。」
「わかりますよ。泣いてないとしても、もうやだーって顔してますよ。」
「でも、ここまですごくいいタイムじゃない?」
「え…?ホントだ。山頂まで残り2キロ、15秒以上ベストより速いですよ。」
多田が高橋を驚いて見た。ちゃんと見てるんだ。やっぱ、指原さんに期待してるって事なんだな。
多田はなんとなく嬉しくなった。

「こりゃ、5区…指原って目もあるかもよ。打倒優子の一番手だったりして。」
高橋は笑った。決して冗談を言っているような顔ではなかった。

16 | Home | 14

Comment

Post comment

Secret

Page top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。